この本の最大の特色は、とにかく丁寧なことである。序文の著者のコメントにもあるように計算過程が目で追うことも可能なくらい丁寧にかかれている点もさることながら、さらに特筆すべきは「物理的にも丁寧」なことである。そもそも初学者にとって超伝導が難しい理由のひとつに、電磁気学、熱力学、統計力学、量子力学などの基礎知識が比較的高いレベルで要求されることが挙げられるが、その点についてもマクスウェル方程式、熱力学の諸関係式、局所ゲージ変換などが必要に応じて書いてあり、このような基礎に自信のないが超伝導の不思議な現象を知りたいという人にもうってつけである。高温超伝導などに関する新しい話題は他書に譲る事になるが、この本は超伝導入門に最も適した本であると思う。

超伝導の教科書としは必ずしも良いとは言えない。しかし、数式の展開が懇切丁寧(丁寧すぎるぐらい)に書いてあるので、正統的な他の教科書で、初学者がつまづきやすい部分をフォローしてくれるだろう。その意味では、よい参考書となりえる。