京都・絶品の四季―四十八景・季節の粧い (新撰 京の魅力)
価格: ¥1,575
「京都が生み出した文化の世界を根底で支え、統合しているのは繊細な季節感であった」(序章から)。文学や芸能、庭園や建築、伝統工芸、そして料理。なるほど、京都で目にする風物にはさりげなく季節感がひそんでいる。本書は、京都の春夏秋冬48景を芥川賞作家がとらえた京都歳時記。あけぼのに映える東山連山、宇治川の流れ、法然院の山門、桂離宮、祇園の舞妓、雪化粧をほどこした金閣寺、そして友禅染め、京都の四季折々の表情を古今の文学作品をちりばめた文章と抑制の効いた写真で見せる。
京都を愛する人は多い。京都を旅する人も多い。しかし、「何度訪れたとしても、何十年暮らしたとしても、最高のものに出会えるとは限らない」と著者は言う。最高の出会いは偶然による。「その幸運を確かにするためには、こちらにもそれ相応の知識と心の用意が欠かせない」のである。本書を片手に京都を歩くより、案外、家でアームチェア・トリップしながら、イメージの京都を歩くほうがいいかも知れない。(松本肇子)