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あえて英語公用語論 (文春新書)

価格: ¥746
カテゴリ: 新書
ブランド: 文藝春秋
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プロパガンダ本 ★★★☆☆
英語が事実上の国際語であるとの認識の下、英語下手では日本は沈没するという危機感から書かれたようだが、著者に有利な事実を飽きるほど並べて不安を煽る論述はほとんどプロパガンダで、少々気分が悪かった。特に終盤の叙述は不快を伴った。言語障壁が大きいのに日本人が英語習得の努力を払ってこなかったのは驚きだとライシャワーがいったそうだが、英語使用を当然の前提とするこうした言葉に対して著者は何の疑いももたず、逆にそれを英語公用語化論に援用する。この感覚は私には理解しがたい。本書は、読中に惹起される気分に基づいて自分の立ち位置が判別できるリトマス試験紙のような側面もある反面、批判的に読まないと「洗脳」されるかもしれない(その場合、本書への批判を基調に書かれた、薬師院仁志『英語を学べばバカになる』で中和されることをお勧めする)。

日本の状況とは違うからか、次の点での英語の有用性は納得できる。いわく「英語は、優勢な多数派民族集団に威圧される少数民族にとっては、時として有効な抗議、抵抗の手段となりうる」(p.114)。伊の北部同盟の地域は伊語を母語とせず、伊語からの抑圧をうけている集団だが、彼らは母語以外に英語という、世界につながる有用な言語を支えとしてもっておきたいと考えているようだ。

また以下の考え方は無下に捨て置けないと考えだと思った。それは、「国語以外の他の言語をも個人のアイデンティティの表現とする」(p.117)という考えだ。個人は集団(たとえば日本)に属するものであるが、同時に集団を超える個でもある。その個として、個人の文化的アイデンティティを作り上げるうえで、世界への接近ということを志向することもあろうし、英語はその手段になりうるというわけだ。地球人という不明概念に接続する懸念や、手段が英語である必然性はないとは感じるにせよ、何か発展性を秘めた考えではある。
敗戦時が最大の機会だったかもしれません ★★★★★
アメリカに占領されたときが、英語を公用語最大の機会だったかもしれない。
占領時から順に独立的になっていこうとしているときに、 これから英語を公用語にするのは無理かもしれない。
コンピュータ業界では英語を業界用語にすることは意味がある。
あるいは、 官庁では、第二言語を義務付けることは必要だと思う。
  英語
  中国語
  韓国語
  スペイン語
  ポルトガル語
が需要が多いだろうか。
これらの言語を習得した公務員がそれぞれ10%以上を超えることを前提に、
 フランス語
 イタリア語
 ドイツ語
 ロシア語
を選択することを可能にするのではどうだろう。

次の参考文献があり、そちらは大変参考になった。
アジアをつなぐ英語
言語戦争
所有から利用へ
英語の未来
地球語としての英語

屋良朝苗回顧録
英語教育
英語物語
ことばと国家
小田誠の英語50歩100歩
なぜ家以後やるの
日本語よどこへ行く
国益を損なう英会話力不足
英語帝国主義論
日本語は国際語になりうるか
外国人とわかりあう英語
バイリンガルの子供たち
日本人の英語
英語を公用語にすることは実現可能なのか? ★★★☆☆
 筆者が戦略的に「あえて」英語を第二公用語とする(もちろん日本語は第一公用語と規定する)という意見には大筋で納得できるが、実現可能なのかが問題だ。また実現したとしても、それが日本社会にどのような影響を与えるのだろうか。私個人としては数ある英語教育改革と同じく、ほとんど効果がないように思う。公式文書を日本語英語の2カ国語で記載する等を実行したとしても、日本人にとっては日本語さえあれば事足りるわけであり、英語を今以上に全国民が習得するきっかけにはならないであろう。(年々増えているとはいえ)少数派の外国人のために英語の記載を義務づけてみても、全国民に根付かないのではないか?日本人が手間、労力、お金をかけている割りには英語が上達しないという問題は確かにある。永年そう言われ続けてきて、英語教育改革も叫ばれていて、事実英語教育は一昔前とずいぶん変わってきたにもかかわらず、英語を実際利用できる日本人はほんの一握りだ。日本国内にニーズがない(足りない)ところに英語を「公用語」と定めてみても、結局は何も変わらないのではないかと思う。
なぜ公用語でなければならないのか? ★★★☆☆
英語を巡っては、非常に多くの議論がある。英語公用語化という意見もあってしかるべきなのだが、この本からはなぜ英語を日本の公用語にしなければならないのか、説得力に欠ける気がした。

確かに、英語は現在世界で最も広く流通している言語の一つであり、この言語を使うことができれば、多くの人とコミュニケーションを取る事ができ、社会的競争や国際的会議の場での日本の存在感は増すだろう。また、今のままでは英語教育はまずいことは確かである。

しかしながら、筆者の経験に基づいてか、社会的側面からの考察が多かったが、歴史的に考えた場合の日本語の伝統、独自性、日本国内での圧倒的な流通度等の側面に対する記述が少なかったように思える。世界的に見ても日本のように植民地化されず絶えず日本語を国語として維持してきた国は稀有である。そういった側面を考慮せず、なぜ英語をわざわざ公用語にしなければならないのか、が疑問だった。

英語教育に対する改革は必要だろう。"Englishes"を学ぶべきだ、とか、ALTは英米人中心で採用するのはおかしい、とか、少子高齢化の時代移民を日本の財産としてよくコミュニケーションを取る必要がある等、多く納得できる部分もあった。しかしながら、なぜ日本という国で移民とコミュニケーションをとるために英語を用いなければならないのか、なぜ公用語として英語を位置づけなければならないのか、等、疑問に感じる部分も多かった本だった。

英語の現状が分かる本 ★★★★☆
この本は英語の置かれている現状について述べた本である。インターネットの発達により、情報を世界から集めるには英語力の有無が大きなポイントとなってくる。著者の意見には賛否両論あると思いますが、いずれにしても今のままでは日本人は世界の人々と対等に渡り合っていけないのは事実です。著者の言うとおり、文化の相違を乗り越えて積極的に自分から英語で発信していく必要性はあります。また、この本は社会言語学の入門書も兼ねています。我々も今英語のあり方について議論すべきときなのではないでしょうか。