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第二列の男

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 作品社
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滴る直前の滴に、地球の重力が溜まる瞬間 ★★★★★
 さまざまな雑誌に掲載した小説を集めた作品集。そのひとつひとつが張りつめた言葉で構成され、そのまま長編小説に展開して行きそうな緊迫感を持っている。とにかくうまい。たとえば寝床の中の男女の会話で進められる「脈拍の間」。濃密な空気と心理がリアルに伝わってくるのだが、ふと気づいて読み返すと、どういうシチュエーションなのか、寝床はベッドなのか布団なのか、あえて書かれていない。すっかり藤沢的言葉の罠に嵌まって、臨場感に浸ってしまうのだ。桜の樹の下の若い女の死体を延々と描写する「蛆」も、この人でなければ書けない。書かない?
 「第二列の男」の主人公は大学を出たばかりの無職の男で、クロード・シモンばりの凄い小説を書く、と意気込み、日雇労働に励んでいる。「粘性率14ポアズ」というタイトルで、書き出しの文章も決まっている。この短編は“あれから二〇年近く経って、物書きをして飯を食うようになったが、未だに、「女に火をつけてみる」から後の文章は完成していない”とやや唐突に結ばれるのだが、巻末の一編「粘性率14ポアズ」はまさにその文章で書き出される。ちょっとシュールなフェティシズム、女の爪、女の眉、脱いだパンプスの底のブランド名の刺繍されたラベル、そして緊迫した透明感のある文章。まさに藤沢周の世界だ。そう言えば長編小説「愛人」の主人公北岡も、女の眉を腕に載せる小説を構想してたよね。
 172頁からの一節は、主人公の脳内の声なのだろうが、藤沢周自身による短い藤沢周論になっている、気がする。“滴る直前の滴”の“一滴には地球の重力が溜まっている”。そう、滴が落ちる瞬間の緊張とエロス。まさにそれ。
いつもの藤沢節が・・・ ★★☆☆☆
苛立つ男がじわじわと苛立っていく…。そんないつもの藤沢節を期待していたのですが、ちょっと物足りなさを感じたのが正直なところ。ただし、コストのかかった文章の味わいは期待通りです。