"infinite space in finite memory"実現へのイントロダクション
★★★★☆
再帰やループが、無限に続く時間を有限の大きさのプログラムで記述する手法とすれば、ガーベジコレクション(以下、GC)は、無限に広がる空間を有限の大きさのメモリ上に実現する仕組みです。
計算機の物理的有限性を隠蔽し我々の世界を構成する無限の時空を記述できることを"高級言語"の必須要件とするならば、GCはその実現に欠かせない機能です。
現実に、GCを採用するJavaやC#などの"高級言語"が、ソフトウェア開発の主要なシェアを占める時代になりました。
あなたが今使っている計算機の内部でも、いくつものGCが動いているのです。
さらには、あなたが使っている電化製品でもGCが動いているかもしれません。
GCの実装技術は今後ますます重要となるでしょう。
近年のプログラミング言語処理系の教科書もGCに章を割いて説明するようになっています。
しかし、本書のようにGCを専門に扱う本はほとんどありません。
本書は概説的な内容です。より専門的な論文にあたる前に読むのがよいと思います。
ただ、GCのサーベイ論文がネットで入手できるので、まずそちらを読むのもよいでしょう。
("Uniprocessor Garbage Collection Techniques", Paul R. Wilsonなど)
本書著者によるAdvanced Garbage Collection: Algorithms for Automatic Dynamic Memory Managementが出るようです。