『カナダ・アメリカ関係史』に関する若干の感想
★★★★☆
本書の目的は、「48年から現在にかけての加米首脳関係概要を、加米の首脳会談に焦点を当てて解明」し、「加米首脳会談における主要争点、ドラマやエピソードの類を吟味する事で、トップリーダー間に表出した二国間関係の一つの様態を鋭くえぐり出」 すことにある。そして最後に、「カナダの指導者がどのようにその対米関係を処理していったのかを評価」 する。
本書最大の魅力は、加米首脳関係のエピソードやスキャンダル、小ネタを交えて、平易な文体で読みやすく書かれているため、カナダについて全く知識がなくとも、小説のような感じで、面白くカナダとアメリカの首脳関係やカナダ外交の主要争点について学べることである。
また、豊富な資料・文献を用いて実証的にあぶり出された加米関係の様態には説得力がある。首脳会談に加えて、国際問題の背景や影響を与えた要素やアクターまで細かく記述して、それを時系列に記述している点からは、加米関係通史の専門書としての価値をも見出すことができよう。
さらに、日本が対米二国間、国際問題の処理に直面した時には、時代背景や地理的相違を念頭に置きながらも、同じく米国の同盟国であるカナダ(首脳)がいかに対応したのかについて、本書から教訓を引き出すことができる。この点、著者が本書を「これまで蓄積してきた比較の視座からカナダをみる試みの一つの集大成でもある」 と位置づけていることにも、時代が求める需要に本書が応えていることを示している。
ただ一点、入門書としては値段が比較的高いことが一読者としては不満であった。売れ行きが心配されるところである。しかし本書は、著者がカナダで行った一年間の研究から生まれた、涙ぐましい成果の一部である。以上の点を総合的に評価すると、本書の評価としては「星4つ以上」を与えざるを得ない。あとは読者側の物理的需要を待つのみである。
対米関係再発見
★★★★☆
「関心の非対称性」、米加関係を考える上で重要な言葉である。
カナダにとって、米国は突出して重要な貿易相手国であり、外交・安全保障上でもかけがえのない重要な同盟国である。その一方で、米国にとってのカナダは、重要な国家であり続けているが、その身近さゆえに時に看過されている。
10倍以上の人口と、圧倒的な経済力・軍事力を持つ巨大な隣国を相手に、カナダはどのように関係を築いてきたのか、また、その裏にどんな意図があり、どんなドラマがあったのか。
この本は、米加関係だけではなく、米国の外交、そして、米国という巨大な国家との日本の関係の在り方について考えさせられる一冊である。
米国の外交史を学ぶ際にもぜひ読んでもらいたい。
外の視点から米国外交を眺めることは、米国の新たな一面の発見にも繋がるだろう。