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ベクトル記号処理法とその論理型言語プログラムへの適用

価格: ¥0
カテゴリ: Kindle版
ブランド: 金田 泰
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この本は 1992 年に東京大学大学院工学系研究科に博士論文 (論文博士) として提出されたベクトル形スーパー・コンピュータによる論理型言語 (Prolog などの言語) や記号処理プログラムの処理に関する研究に関する論文をほぼもとのままのかたちで出版したものである.文字サイズがちいさいが画像なので変更できないことをおわびする.

要旨

Cray-1 を祖とするベクトル計算機は,従来,ほとんど数値計算専用につかわれていた.しかし著者は,HITAC S-810 などの第 2 世代ベクトル計算機がもっているおおくの機能は記号処理いいかえれば非数値処理に使用できることを確信した.それにもとづいて研究・開発された各種の記号処理のベクトル計算機における実行のための基礎技術について,この論文ではのべる.すなわち,第 1 に N クウィーン問題をはじめとするさまざまな解探索問題あるいは AI プログラムのベクトル処理を可能にする並列バックトラック技法についてのべる.第 2 に,記号処理に特徴的なリスト,木,グラフなどの可変長データ構造を処理する複雑なくりかえし制御構造を,くりかえし構造の交換やくりかえし構造の 1 重化などにもとづいてベクトル処理可能にするベクトル化法についてのべるとともに,リストのベクトル処理に必要な基本演算のベクトル処理法についてのべる.第 3 に,グラフや共有要素をもつリストや木などの共有部分があるデータの処理や,複数データのハッシュ表への登録のように同一データへの同時かきこみをおこなう可能性がある処理をベクトル処理するための方法についてのべる.

また,これらの基礎技術の応用として開発されたベクトル化法とそれによる実測結果とをしめす.すなわちまず,Prolog で代表される逐次論理型言語によって記述された解探索プログラムのためのベクトル化法についてのべる.このベクトル化法の適用によって,S-810 による N クウィーン問題のプログラムの実行において逐次実行の 9 倍程度の高速化を実現した.また,逐次論理型言語および GHC で代表される並列論理型言語による素数生成問題のプログラムのためのベクトル化法についてのべる.このベクトル化法の適用により,逐次実行の 3 ~ 4 倍の高速化を実現した.また,入出力データのモードが確定した解探索などの逐次論理型言語プログラムから高速なベクトル処理をおこなうプログラムを生成することができる自動ベクトル・コンパイラのプロトタイプを開発したが,その構造と機能とについてのべる.これらの論理型言語プログラムのベクトル化法は,たかい加速率をえようとすれば限定された範囲のプログラムしか変換できないが,今後の開発によってたかい加速率とひろい応用範囲とを両立させられるようになることが期待される.

さらに,これらのベクトル処理法において使用されているマルチ・ベクトルというデータ構造についてのべる.リストなどのポインタを使用したデータ構造をマルチ・ベクトルに変換することによって,広範な記号処理をベクトル処理可能にすることができる.これらの研究成果により,ベクトル計算機の一部の記号処理への適用可能性を実証し,ベクトル計算機の応用範囲の拡大を実現することができたとかんがえる.また,これらの技術は,パイプライン型ベクトル計算機にとどまらず,今後飛躍的に発展することが予想される Connection Machine CM-2 のような SIMD 型並列計算機に応用することができるとかんがえられる.

目次

第 1 章 序論
第 2 章 解探索のベクトル処理
第 3 章 制御構造変換にもとづくベクトル化 — 1 リスト処理
第 4 章 制御構造変換にもとづくベクトル化 — 2 くりかえし構造交換法の比較評価
第 5 章 共有部分がある複数データのベクトル処理法
第 6 章 論理プログラムへの応用 — 1 OR 並列性をふくむプログラムのベクトル化
第 7 章 論理プログラムへの応用 — 2 AND 並列性をふくむプログラムのベクトル化
第 8 章 論理プログラムの自動ベクトル化処理系とその中間語
第 9 章 マルチ・ベクトル — ベクトル記号処理のためのデータ構造
第 10 章 結論
参考文献

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