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子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

価格: ¥861
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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白金(しろがね)も 黄金(くがね)も玉も なにせむに 優れる宝 子にしかめやも ★★★★★
「白金(しろがね)も 黄金(くがね)も玉も なにせむに 優れる宝 子にしかめやも」
万葉集に所載されたこの山上憶良(やまのうえおくら)の歌を高校生のとき初めて知って
金銀財宝より何より大切なのは子どもだ。というストレートな気持ちの表現に17歳ながら、
グッときたものである。
現代でいうなら憶良の歌を「もっと子どものために(子ども手当のような)
場あたり的な経済対策でなく、長期的な視野に立って子どもの貧困をなくすべきだ」
と読み替えることもできるだろう。

この本にはさまざまな現代の子どもの貧困の実態が記録されている。
ひとり親世帯の貧困・貧困の世代間連鎖・貧困と学力・子どもの貧困と自己責任論
貧困に陥らないための砦、定時制高校・給食でしか腹を満たせない子ども・
貧困と就労教育・障害者と貧困。

何よりも子どもが大切だと歌って誰もが共感する憶良の歌はどこに消えてしまったのだろう。
説得力のある理詰めの本 ★★★★★
 この本については、多くのレビュアーさんが高い評価をされており、私はそれらのレビューを参考に、この本を手にとった。
 そして、読んでみると、期待以上に説得力のある良書だった。

 貧困をテーマにした本は、個々の具体的ケースを取材して記述するものと、統計からアプローチするものに大別されるが、本書は(一部アンケートによるナマの声が紹介されるものの)ほとんどが統計からのアプローチとなっている。
 
 (a)貧困家庭に育った子どもは大人になっても貧困となる確率が高いこと、(b)世界の中でも日本の子どもは比較的貧困率が高いこと、(c)日本は家族関係の給付水準が国際的にみて低いこと、(d)政府の所得再分配によってかえって貧困率が高まっていること(これは非常に驚き! 何のための政府なのかと思う)、などなどがデータを用いて説得力をもって語られる。

 日本では、これまで「均質で高いレベルの教育によって質の高い国民が生み出され、そのことが社会の安定や産業の競争力の基礎となっている」と信じられてきたが、結局その教育水準というのは親の負担で成り立っていたわけで政府は無策であったことが、この本を読めばよくわかる。
 そして、経済格差やワーキング・プアの問題が顕在化している現状においては、(a)大人、子どもともに個人一人ひとりの幸せが確保できなくなっていること、そして(b)子どもの貧困がこれからの日本社会の重大な危機を招きかねないことが理解できる。
 一刻も早く、少しでも多くの人が読むべき、必読の書といえると思います。
子どもの貧困から見えてくるもの。 ★★★★☆
本書を読むと、子どもの貧困にも増して母子家庭差別の告発という要素が強いようにも
感じられ、そもそもなぜそれほどまでに母子家庭は差別されるのかといったところに問
題の本質があるように思われ、そこを突き詰めない限り結局は子どもの貧困問題の解決
も難しいのではないかという気がします。

不況の影響が社会的弱者といわれる人たちに最も顕著に現れるのは当然であり、その端
的な例が子どもの貧困というわけですが、その背景にある母子家庭への社会的排除も、
あまり省みられない父子家庭の困窮も、高齢独身女性の貧困も、結局は性別役割分業と
いうこれまでの価値観が強固に存在していることが根本にあり、男性稼ぎ主モデルを軸
とした現状の制度的制約が大きく影響しているものと思われます。

よって経済政策以前に、価値変化を伴う社会構造の転換が必要であり、そのキーワード
が最近よく言われる、ワークライフバランスであったり、QOLといったものだと思い
ますが、それらがまだ経済成長阻害要因として後回しにされがちなのは、慣習と言う名
の既得権益が社会に根強く存在しているからではないかと考えられます。

指摘のように、日本の政策は福祉の視点ではなく労働すなわち経済対策の視点で行われ
ているようだというのはその通りであり、そのような政府や親のための「少子化対策」
ではなく、子どもの幸せを考えた子どものための「子ども対策」を行って欲しいという
著者の主張には強く賛同します。

本書は、子どもの貧困の現実を明らかにし、その状況を何とかしたいという著者の切実
な訴えの書であると同時に、日本人の子どもの必需品に対する支持の低さや、母子家庭
への厳しい目に象徴される自己責任意識に基づく社会的不寛容さと、その背後にある男
性原理に基づく社会システムの歪みの是正を迫る意識改革の書でもあると思います。
今の高齢者も若い頃は苦労したのだろう。しかしこれを読んだらもらい逃げは出来ないはずだ! ★★★★★
子ども自身が貧困ではなく、子どものいる家庭が貧困に陥っているということだが、昔のように貧困家庭に育っても社会的に成功するチャンスがわれわれの親の世代程多くなく、むしろ貧困家庭に育つ→高等教育を受けるチャンスが激減→就職で不利に→自身が貧困層から抜け出すことができない、と貧困層が固定化してしまう傾向が強まりつつあるようだ。

 だれもすき好んで貧困になりたいとは思わないはずだが、貧困層が増加することで本人が苦しむのみならず、貧困がさらなる悲劇や苦痛をもたらすこともあるだろう。もっと言えば社会が不安定になることにもつながるかもしれない。その意味では「本人の責任」といって放置することはできないのである。

 その上、ショックだったのは、子どもの貧困率を家族給付や減税等による再配分の前後で比較したグラフ(p96)だ。OECD18カ国中、日本だけが再配分後の方が貧困率が増加している。社会保障制度や税制度によって日本の子どもの貧困率は悪化している!こんな国はない。

 なぜ日本だけこのようにお粗末な状態になっているかは、終身雇用と年功序列により会社が社会保障の役目を果たしていたため国が制度を考えなくても良かったからだというのが筆者の分析である。

 今後少子高齢化がどんどん進む中、若い人の活力をより一層引き出せるような社会制度をつくっていかねばならないのに、今の日本はその逆を行っている。このままではジリ貧である。

 こんな日本の現状を何とかすべく11の提言を著者は行っている。またイギリスの貧困研究学者ピーター・タウンゼントが提唱する「相対的剥奪による生活水準の測定」という手法を紹介していて、このような数値指標を用いて為政者や国民の心に訴えないと政府支出を増やすための原動力にならないという意見には納得である。
 
こんなすごい本の著者は左翼系の論者か政治家かと思っていたら、国立社会保障・人口問題研究所の室長であるというところがまたまた驚きであった。先日の経済財政諮問会議においてはこの本でも提言されている「給付付き所得減税」が民間議員の意見として出されており、与党野党ともに検討することと聞いている。役人でもムーブメントをおこすことが可能ということである。見習いたい。
危ない橋を渡るよりも、みなで渡れる橋をかけよう ★★★★☆
子どもの貧困率は15%だそうだ。
日本の子どもの6人に一人、7人に一人は「貧困」であるという率になる。

「貧困」という言葉の強さになんだかピンとこないわけなのだけれど、
経済的不利、の状態から、ずっとずっと抜け出しえない、
スタートラインに立てない、逆転の可能性を永遠に失われている状態、
「日本の子どもについて、社会が許すべきでない生活水準=子どもの貧困」
と阿部さんは定義している。

阿部さんが浮き彫りにする事実に圧倒される。
貧困層にいつなんどき、落ちこむともかぎらない細い細い橋の上を私たちは生きている。
だからこそ、私だけは落ちないように、身を守る術を、と教えるのではなく、
みなで手をつないで渡れる橋を持ちたい。

阿部さんが見出した「日本版子どもの貧困ゼロ社会へのステップ」11を提示してくださっていることに感謝。
いつだって、指針は灯台のように、目指す先を照らしてくれる。
11のステップは、読むと、これが実現できたら私が楽になる・・・。
社会に生きる大人が少し楽になれる内容ばかり。
子どもに注ぐまなざしは、そのそばに立つ大人のゆとりの確保にほかならないと、あらためて感じる。
のは、私自身がとってもとってもゆとりのない、大人、だから。