インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

日本の臓器移植----現役腎移植医のジハード

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 河出書房新社
Amazon.co.jpで確認
脳死は人の死かという核心の説明がない ★★☆☆☆
小松美彦さんなどの本を読むと、「脳死は人の死」とは思えなくなる。
そこで、「脳死は人の死」と主張している人の新しめの本はないかと思いこの本に行き当たった。

だが、この点については肩すかしをくらったという思いのみが残った。

第6章「脳死をめぐる問題」を見ても、つまるところ

「日本などほんの数カ国を除いたほとんどの国が脳死を一律に「人の死」と法律や学会で定め、
そこからの臓器提供を認めています。ローマ法王庁もそれを支持しています。」

ということしか書いてないようで
そうした諸外国の判断が下された経緯や論拠についての説明や
またそうした判断を日本でも支持するべき根拠がまったく示されていない。

外国では大体こうだから(そのことだけを理由として)合わせるべきだ、
というのは議論としては不十分で、
この論法を押し出す人は同様に、日本の再軍備、死刑廃止を推進する用意がなければならない。

上述の箇所に続いて本格的な検討に入るかと思うと全く入らない。

どころか、「生命維持装置を付けられた脳死状態で延命させられるのは人間の尊厳に反する」という
議論に入る。この主張の意味は、脳死状態に陥ったら心臓死を意図的にもたらして問題ないという
ことであるが、「人の死」を迎えたということが確立されていないのに、心臓死をもたらしても
いいといえるのはなぜなのか疑問である。
死に行く人は、まだ死んでいない。 ★★★★☆
臓器移植法案A案の可決に伴い、手に取った。
現場で腎移植を続けてきた著者の臓器移植を推進する主張は明快であり、同意できる点は多い。
脳死が明らかであり本人の意思が明示されている場合、臓器移植を可能とするというところまでは賛成する。
ただ、それに伴うリスクについて、踏み込んで論じられていないのは残念。
厳密な脳死判定を可能にするための、医療現場のありかたについて、すでに多くのレポートは問題を指摘している。
つまり医療現場で臓器移植を急ぐために、脳死判定がおろそかになり、脳死判定前の患者を脳死判定してしまう可能性や、わずかの可能性が残された脳死判定前に最善・最先端の治療を行わずに脳死になるのを待とうとする、あるいは積極的に脳死に至らしめようとする問題について、どのような解決があり得るのか、多くの脳死臓器移植推進の議論と同様、踏み込んだ議論がなされていない。
移植を待つ子を救いたい。脳死になりそうな子を救いたい。その二つの倫理は等価であるべきであり、どちらかが優先されることはあってはならない。そこで国際比較は意味を持ち得ないし、終末医療の意味はその議論の後に生まれるテーマではないだろうか。
移植を待つ子供に死を宣告しないで ★★★★☆
日本の移植医療の現状と問題点について、移植医の立場から非常にわかりやすく解説されています。前半が透析と腎移植を巡って、後半が脳死と臓器提供を巡って。ないがしろにできる問題はどれ一つとしてありませんが、後半部分には先日衆院可決した臓器移植法改正A案を考える上で参考になる事柄が数多く書かれており、特に興味深く読みました。
たとえば子供の脳死移植の問題。著者は当然認める立場です。日本はお金も技術もあるのに外国からもらってばかりいる、と諸外国から閉め出されつつある現在、そうしなければ子供は死ぬしかないからです。だとしたら、A案を認めないのはあまりに冷酷です。
欧米だって脳死を認めない人は30%くらいの割合で常にいると本の中にあります。それでも日本と比べものにならないほどドナーが多く、外国人にまで移植の門戸を開いている。相互扶助の精神が生きているからではないでしょうか。
自分や家族が生涯にわたって臓器不全にならない保証はないし、明日交通事故で脳死になるかもしれないのです。脳死や臓器移植がとても他人事とは思えません。臓器を取られる、取られると大騒ぎしないで、もっと冷静に、自分の問題として考え、臓器を提供するか、それとも拒否するか、ドナーカードで意思表示を明確にしておくべきです。この本は、そのことの大切さも教えてくれました。
孤軍奮闘 ★★★★★
12年間透析を続けている友人がいる。移植を望んでいるが家族にドナーの適応者がいない。著者が松原のぶえさんの生体腎移植を執刀した移植医だと知り、移植のことを知りたくて読んでみた。

まず率直なもの言いに好感をもった。移植医なら本来隠しておきたいであろう薬の副作用や合併症についてはもちろん、免疫力低下によるがんの発症数・死亡数まで詳しく書いてある。医師は病人の治療が本来なのに、健康な人に傷を負わせざるを得ない生体間移植に臨む覚悟も語られている。

僕自身は脳死になったら延命治療を中止し、使えるものならすべて提供しようと以前から考えている。でも絶対に脳死を認めない、絶対に臓器を提供したくない、そういう考え方も否定しない。その人たちはドナーカードの「提供しません」に丸印をつければいいだけのこと。

でもそうするのは移植医療の現状を知ってからでも遅くないはずだ。和田移植は確かに負の遺産だが、信頼回復のために移植医たちがどれだけ努めてきたか、繊細とも思えるほどのきめ細かな医療が、しかも長期にわたって行われていることを本書で知れば、また違った考えも出てくるはずだから。

脳死移植を認めない人は、心臓がまだ動いているのに臓器を摘出するのは人間の尊厳を損なう行為だという。しかし本書を読むと、「そこにいるだけでいいから」と遺された側のいわばエゴで脳死の人を長期間人工呼吸器についないでおくことこそが、実は人間の尊厳を損なう行為だと気がつく。脳の解剖写真も説得力があった。

移植を必要としている人はもちろん、脳死移植に反対の人にも是非読んでもらいたい。