いま押さえておくべき議論
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OECDの報告など,幼児教育や保育の質の議論はホットだが,2つの系譜があるとのこと。小学校の前倒し的発想と,1人の市民として子どもの育つ権利といった発想。いずれにせよ,保育の質というものに注目し,継続的なデータを集めて,子どもの成長をとらえている姿勢は共通している。どうした保育を目指すかは,国家によって違ってくるのは必然だと思うが,「科学的な検証」のない議論は,まさに机上の空論でしかない。
では日本ではどうか。昨今政府でなされている質の議論は,市場主義からの要請の側面が強く,実際は質の議論ではなく経費削減のための論理でしかないことがわかる。公立の認可,私立の認可,認可外,と質の差は明らかなのに,利用者である親の評価から「差がない」ということで,コストが高い常勤職員ではなく臨時職員を増やせ,との議論がなされる。そこには子どもにはどういった働きかけが必要で,そのためにの保育士の能力向上のためにはどういった方策が必要か,という発想はない。非常に短期的なコスト観しかない。
そもそも,認可であっても保育士と子どもの比率など日本の基準は最低レベルでしかない。
保育に携わる人,行政の関係者には,ぜひ読んでほしい。また,一般の親御さんでも十分読める内容である。