「趣味の園芸」っぽいけれど、農家向け? 要領よく記載されているが、まだまだ改訂に期待
★★★★☆
街を綺麗に飾る植え込みなどの花が、しおれかけると抜き取られ一斉に新しい花に代えられるのになんだか疑問をもっていた。せめて自分の育てる植物は動物のペットと同様、花も葉も実も楽しんで、できたら種もとり、最後まで看取ってあげたい。そう思っていた時に本書が目にとまった。
同じように考えている人が結構いるようだ、と嬉しかったが、取り上げられているのはいわゆるキュウリ、ナスといった野菜類である。本の帯にも「昔からの大事な種子を自分の手で次代に伝える!!」とある。趣味の園芸というよりは、食用作物の、地域に根づいた品種の保存が主旨のようである。
とはいえ、繁殖方法の基礎知識(自家受粉、他家受粉とか)や交雑の基礎知識も書いてあり、個々の野菜の種の取り方もポイントを押さえて要領よく書かれている。基本的に一種は見開き2ページにまとめてあるのもみやすい。栽培の注意点なども書かれている。カラスウリは作物でないので載っていないが、他のウリ科を読めばかなり参考にはなるので、趣味の園芸家でも役に立つことは多い。
役に立つ本だと思ったので、さらなる改善を期待して幾つか気付いた点を:
1)全体に写真はかなり豊富なのだが、種を採ることに関係した肝心の写真が少々少ない。あまり目にしたことがないものについては、頑張って写真を増やして欲しい。
2)調理法が紹介されているものがあるが、「たねとり」にあまり関係がないのでは。種や実、処理方法の写真やスケッチをいれてあればその方が役に立つ。
3)近年取り入れられた野菜も記載されている。本書の主旨は「地域に根づいた品種の保存」のように書かれているが、その主旨からは一寸はずれていないだろうか。タイトルも「にっぽん たねとりハンドブック」と「日本」が入っているし。
4)イモ類やゆりなどは「株とり」になっている。「種芋」というぐらいだからいいじゃないか、とも言えるのだが、交雑して新しい品種を作る場合などはやはり「種」を採らなくてはならないだろう。そこはやはり、本来の「種」採りも記載して欲しい。
改訂に期待したい。