取り上げているテーマは、燃料電池の技術進展の経緯、基本的な原理、燃料電池の種類、暮らしのどの場面に生かされるか、自動車の方式にはどんなものがあるか、普及への課題など。これらを70のトピックスに分け、すべて図表入りで解説している。
原理については、水の電気分解の逆、つまり水素から電気エネルギーを取り出すのが燃料電池だと説明している。電気分解や乾電池の図解と比較しているのでわかりやすい。固体高分子形、リン酸形、アルカリ形など各方式の区別も非常に丁寧。また二酸化炭素の排出が抑制でき、高い発電効率をもち、排熱を有効利用できるコージェネレーションシステムであること、安全性やコスト、法整備の面で課題が残ることなど、画期的な部分とネックになっている部分が理解できる。図表はカラーで見やすく、複雑なシステムがまず形として目に飛び込んでくるのがありがたい。
「水素社会」を実現する燃料電池は、社会を根幹から変えるインパクトをもつことが本書からわかる。産業界が経験する今後の変化や、暮らしにどんな恩恵がもたらされるか、手がかりが得られるはずだ。(棚上 勉)