本書は、同趣旨の記述があちこちに繰り返し現れ、構成面で覆いがたい難点を含んでいる。また、激しい文章をもって展開している論理はかなり独善的で、説得力に富むとは言い難い。物事を論理的に考える習慣のある読者ならば、読み続けるのがあほらしくなるかも知れない。主張している内容も一面的で、本書のみをもって消費者金融や自己破産増加の問題を考えるのは危険である。
にもかかわらず、普段主として消費者金融業界の主張を聞いている方には、本書を一読されることを強く勧めたい。業界関係者が進んで言おうとしない事実が書かれている。消費者金融業界が言うことだけを聞くことも同様に危険である。弁護士が書いた本だけに、法律面の記述は詳しい。
著者よると、消費者金融会社の中には、法律で定められた上限金利を上回る法律違反の会社もあり、取立て方法も悪質なものが少なくないそうです。これに対し、消費者金融に関する知識を得るための教育もないため、20代の若者の利用が増えていることが問題視されています。最近では、映画「夜逃げ屋本舗」や小説「火車」など、消費者金融の悪質な手口にはまり、抜け出すことのできなくなった人々を描いた作品も出てきていますが、CMでのイメージで軽くお金を借りる前に、読んでおきたい一冊だと思います。
但し、なぜ、消費者金融(正確には大手消費者金融業者)がこれほど繁盛しているかということへの洞察は弱い。また、繰り返し似たような記述が表れるのも目障りではある。そのせいかどうか知らないが、読後感がいまひとつすっきりしない。
本書によれば,不況にも関わらずサラ金が盛況なのは,…サラ金の過剰融資という原因も確かにあるが…銀行が「非優良融資先」である一般消費者や中小事業者には融資を渋っている一方で,「優良融資先」であるサラ金には低金利で大量の資金を貸し付けているという事情によるところが大きい.銀行の与信能力が貧弱であるため,有望な事業者を選別できず,結果として「安パイ」であるサラ金にばかり金がまわるわけだ.私は,フランスやドイツでは,(利息の違いはあれ)銀行は弱者にも貸付を行うため,そもそも「サラ金」なるものが存在しない.という事実に驚いた.
そして,このような銀行の貧弱な与信能力に加えて,弁護士不足・裁判制度の機能不全という我が国の司法制度の稚拙さや,サラ金業者への行政の介入の拙さ,利息についての立法の不備,広告収入の関係でサラ金の実態を報道できないマスコミ(サラ金はニュース番組のスポンサーでもある)の不甲斐無さ,などが相俟って,サラ金問題が「社会問題化」することになる.
このような背景事情をきちんと書いているという点で,本書は評価できる.記述も分かり易く,お勧めです.
その多重債務者を生み出す原因となる消費者金融やその他の高金利貸出で利鞘を稼ぐ金融業について、本書では批判をしているが、その中心的根拠は、1.利息制限法以上(100万円まで年利18%、それ以上年利15%)出資法以下(最高年率29.2%)のグレーゾーンで運用していること、2.預金金利(0.02%)の1450倍という高金利で貸出していること(特に以前の日本や、海外に比べ、その比率が高い)の二点のみである。
この多重債務者を含む消費者金融に関る問題について、解決策として、対症療法的なものが提案されており、具体的には社会的仕組みとして金融業を如何に規制するかが論じられている。だが、金融という仕組みを正しく消費者に理解してもらうことなく問題が解決できるかどうかは疑問。
特に、消費者のリテラシーの向上については、多重債務者の惨状のみを以って金融についての問題点を、害という側面から一方的に伝えており説得力不足。
とはいえ、これまで新書でこういった内容をデータをもって論じたものはなく、一読する価値はある。