本書の大部分は、ヤマト福祉財団が共同作業所の運営者を対象に行っている「経営セミナー」の講義内容に沿ったもので、「経済とは何か」「経営とは何か」と題し、市場経済の仕組みの中で、どのように利益を得ていくかという具体的な経営ノウハウが盛り込まれている。さらに、実際に障害者に対し月給10万円以上を支払い、フランチャイズを拡大しているスワンベーカリーなどの事例も紹介されている。
本書を読み進めると、著者の福祉に対する考え方や取り組み姿勢には、宅急便に対するそれとの共通点が多いことに気づく。たとえば、働く人のやる気を引き出すことが健常者や障害者を問わず何よりも重要なことと考えているし、国や地方公共団体を頼りにしすぎることもない。もしヤマト運輸と同様にさまざまな企業が経営の知恵を出し合えば、社会全体のノーマライゼーションの実現に一歩近づくことができるのではないだろうか。福祉にとどまらず、企業のあり方についても考えさせられる1冊である。(戸田圭司)