お手軽ユーザビリティテスト・ガイドブック
★★★☆☆
ユーザビリティ界の人気者スティーブ・クルーグの新作です。「ロケット手術」とは"すごく難しい(と誤解されている)コト"を皮肉った彼の造語で、要するにユーザビリティテストを示しています。つまり、タイトルを意訳すれば「お手軽ユーザビリティテスト・ガイドブック」といった感じでしょう。
一般に「ユーザビリティの大御所(例えばヤコブ・ニールセンやアラン・クーパー)が書いた本はユーザブルではない(読みづらい)」という矛盾を抱えていることが多いのですが、彼の著作の読みやすさは1作目の「Don't make me think!(邦題:ウェブユーザビリティの法則)」から折り紙付きです。今回も軽妙な語り口で、かつ簡潔にそのノウハウを紹介しています。
彼の主張は3点に集約できると思います。
・定期的(月イチ)に小規模(被験者3人)なテストを繰り返そう!
・関係者にテストを見学してもらおう!
・問題解決では最善を"尽くさない"ようにしよう!
ちょっと"受け"ねらいの表現を多用している感もありますが、内容的には私たち実務家から見ても納得できるものです。特に、関係者に見学してもらうことの重要性と、そのためのノウハウ("おやつ"をケチらないとか)は参考になりました。また、ホームページ(サイトのトップページ)の重要性を改めて指摘している点は、ちょっと意外であり、でも納得のいくものでした。
ただ、全般的には内容は非常にオーソドックスです。ユーザビリティの実務家にとっては新しく得られる知見はほとんどないと思います。それは逆に言えば、初心者にとっては、きっちりポイントを押さえつつ手軽に読める優れた入門書であると言えるでしょう。
残念ながら現時点では翻訳本は出ていないようですが、英語が得意でなくても、辞書を引きながら4〜5時間で読了できると思います。それは物理的に量が少ない(実質110ページ程度で文字も大きい)からです。また箇条書きや強調表示を適切に使用してくれているので要点を把握しやすいのです。
「予算も経験もないけれど、何とかユーザビリティテストをしてみたい!」――という場合は、この本を片手にちょっと試行錯誤してみる価値はあると思います。