血糊と肉汁と臓物……究極のスプラッター表現が収められた短篇集
ふたりは、肉を千切って掴みだしたり、ほじくったりして、なんとか突き破ろうと努力をくり返す。お腹のなかで二本の腕と掌の蠢く様子が、外から見て取れる。皮膚が不自然に持ちあがったりよじれたりするのだ。面白かった。
だが、どうもうまくゆかない。ぼくとヒロシが、背中とお腹のあちこちに、包丁で切れ込みをつけ、ようやく爆裂に成功。四人はもちろん、部屋じゅうが肉汁まみれになってしまった。みちこちに、綿の塊りのような肉片が転がっている。
あとでママがカンカンに怒るだろう。ママはとってもきれい好きなのだ。
若い女をいけにえに選んで正解だった。ここまでされても彼女はもそもそ蠢いている……。(「その十 『死霊のはらわた』ごっこ」より)
スプラッターの帝王・友成純一による傑作ショート・ショート〈へんたい千夜一夜〉十二本を完全収録。「電子版あとがき」を追加収録。
・その一 娘に虫がつく
・その二 少女の性欲
・その三 少女パノラマ
・その四 反革命の屍をこえて!……ある活動家の手記より
・その五 ブラウン管ドローム……念映
・その六 “彼”は廃人
・その七 「もっと刺激を!」……恐怖の濃硫酸浣腸
・その八 ぼくのママは吸血鬼……恐怖の近親相姦
・その九 スカートめくりがへんたいの始まり……透視
・その十 『死霊のはらわた』ごっこ
・その十一 『悪魔のいけにえ』ごっこ
・その十二 『ハロウィン』ごっこ
●友成純一(ともなり・じゅんいち)
1954年福岡生まれ。1976年、早稲田大学在学中に「透明人間の定理リラダンについて」が幻影城新人評論部門に入選。映画評などでも活躍したのち、1985年「肉の儀式」で小説家デビュー。官能的でバイオレントな作風が注目を浴びる。以後、スプラッター小説のパイオニアとしてだけでなく、SF、ホラー、怪獣小説などでも鬼才ぶりを発揮し、多くの著作を発表。またロンドン関連の著書も多い。現在はバリ島在住。