スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 マクロ編
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この本は、すでに出版されているミクロ編に続くものです。
まずはミクロ編を読んだうえでマクロ編に進んでほしい。著者は、そう考えて、この順番にしています。
原著は1冊にまとまっていますが、日本語版は、読者の便宜を考え、2冊に分けました。
ミクロ編で紹介したように、著者のティモシー・テイラー氏は、経済学者。
アメリカ経済学会発行の雑誌の編集に長年携わってきました。全米各地の大学で経済学の講義も担当し、
スタンフォード大学とミネソタ大学では「学生が選ぶ講義が上手な教師」の1位を獲得しています。経済学の基礎を知れば、世の中のしくみが見えてくる。
国民のためにどんな政策が必要かもわかってくる。彼はこう説きます。
マクロ経済学の「マクロ」とは巨視的な見方のこと。単にミクロ経済学を大きくしたものではなく、経済全体を大づかみにする学問です。
個々の企業や人びとの経済活動を分析するのがミクロ経済学ですが、そうした個々の活動の集大成の結果、一国の経済や世界経済は、思わぬ動きをすることがあります。
それを分析するのがマクロ経済学です。
日本経済は、長いあいだデフレに苦しんできました。デフレから脱却するため、
公共事業の拡大などの財政政策がとられてきましたが、財政状態が悪化するばかりで、デフレ脱却に結びついていません。
これについて著者は、こう書きます。
「財政政策は痛みをやわらげるだけで、痛みのもとを取り除くことはできないのです」
これは、日本の政治家には耳が痛いのではないでしょうか。
2012年暮れの総選挙で誕生した自民党の安倍晋三内閣は、日本銀行のデフレ対策が十分ではなかったとして強い批判をつづけ、総裁と副総裁を総入れ替えしました。
これにより、今後、日銀の金融政策がうまくいくのでしょうか。本書の著者の解説を読んで、考えてみましょう。テイラー氏は、こう言います。
「デフレによってもたらされた不況には、金融政策がうまく効かないのです」
これは、アベノミクスに対する、やんわりとした批判になっていますが、もちろんこれは、日本でアベノミクスが打ち出される前に書かれた本です。
著者の考えは、経済学界多数派のオーソドックスな理論です。
これを読めば、アベノミクスが例のない大胆な挑戦であることがわかります。
この理論を踏まえたうえで、アベノミクスの成算をチェックしましょう。
このほか、外国為替の変動の不思議についての解説など、具体的な例示に富んだこの本は、これからの日本経済と世界経済を予測する力を与えてくれます。
「ある国の経済が成長したからといって、ほかの国が貧しくなるわけではない」
これが彼の主張です。じっくり読んでみましょう。経済学の力を実感するはずです。