明瞭、簡潔な教科書
★★★★☆
物権は物を支配する権利であり、債権は人に対する一定の給付を求める権利です。物権は法律で定められたものだけに限られます。債権を特定せず抵当権を設定して債権の発生消滅に左右されない根抵当権や所有権の取得を仮登記することで担保する仮登記担保権、とりあえず債権者に所有権を譲渡することで債権の弁済により権利が債務者に戻ってくるが、債務不履行の場合債権者に権利が帰属する譲渡担保権などは慣行として行われてきたのが法律で認められた物権です。現在の民法財産法は、フランス法のように、物権変動に関して意思主義をとり、意思があれば即物権変動が生じ、不動産物権変動に関して登記は対抗要件で公信力がなく、ただ対抗要件のため、悪意の第三者にも二重譲渡が可能なので、英米法の判例法のように権原主義で真正の権原を持つものからしか物権は移転できないということがありません。それに対し、日本の民法が参考にしたとされるドイツ民法は有因主義を採り、物権の変動には登記や引渡のような法律行為を必要とします。そのあたりもこの本を読めば、詳しく説明されています。
本来勉強というものは苦痛を伴うもので、こつこつ努力しなければ身につかないものですが、いい教科書と、簡潔な説明、理解できるまで考える努力が出来れば、このようなSシリーズも要点をまとめられた、簡潔な、教科書として役に立つでしょう。