自治体再生の特効薬 企業誘致成功の秘訣とは
★★★★★
最近マスコミを賑わす東国原英夫宮崎県知事が宮崎県の「セールスマン」なら、
松沢成文神奈川知事は神奈川県の「ビジネスマン」といえるだろう。
本書は、神奈川県の企業誘致政策である「インベスト神奈川」を活用し、
日産自動車や武田薬品工業などの有力企業を誘致した松沢知事の成功秘話を描く。
知事自ら企業トップを訪ねて移転の条件を聞き、
県内における先端産業の集積や助成制度などを提案した上で、
実際の誘致につなげる。
その経済波及効果は10年間で約9兆3千億円。
かの日産自動車社長兼CEOのカルロス・ゴーン氏をして
「グローバル経済において成功を収めようとするすべての地域にとっての好事例である」と言わしめる。
自治体再生の重責を負う地方行政関係者はもちろん、
企業経営者にとっても示唆に富む内容だ。
企業誘致策パッケージ
★★★★☆
神奈川県の企業誘致策パッケージが、知事の筆で解説されている。助成制度などの金銭的なインセンティブとともに、県側の窓口を1本化したワンストップ・サービスが重要だったことが、企業側の声も交えて述べられている。大きく報道された武田薬品の誘致にも触れている。
インベスト神奈川は研究開発分野の投資への助成を大きくしているところに特徴がある。単なる企業というパイの奪い合いではなく、自地域の優位性を生かそうという点、それがR&Dであるという点が興味深い。
企業誘致に熱心な自治体はあるが、自地域の優位性を生かして、なおかつ企業の立場に立った活動を行っているところはまだまだ少ないのではないか。全国の自治体トップや職員だけでなく、立地を検討中の企業担当者も読んでおいて損はない1冊。