史料価値あり
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ES175とは、蒸気機関車のD51のようなもので、ワークホース・ギターの代表格とされている。
そのES175に焦点をあてて、開発の経緯から、90年代まで、スペックの変遷や、使用ミュージシャンについて、解説した本。
ジョー・パスやパット・メセニーだけでなく、けっこういろいろなギタリストが愛用していることが写真でわかる。
日本ではほとんど知られていないハワード・ロバーツが、若いころはチョイ悪風の男前だったこともわかる。
全部英語だが、内容は平易。
写真は白黒が基本。一部にカラー印刷もある。
著者は、アメリカの音楽の先生らしい。
レスポールやストラトキャスターの解説本は、けっこう出回っている。
反面、とくに日本では、フルアコギターについて詳細に解説する企画は、せいぜい雑誌の特集記事程度であろう。
本書のように、ES175ドンズバの解説本は、まずお目にかかれないのだ。
面白いのは、ギブソンの社史についても、ギターの変遷というかたちで、一定の記述があることだ。
ギターを知っている人ならわかると思うが、70年代〜80年代のギブソンは、一部のモデルを除けば、50年代とは比べ物にならないくらい質が悪かった。
私も製造業にかかわっているので、製造原価を下げることの重要性はわかっている。
ただし、楽器は、外観が無傷であれば良いとか、スムーズに動作すれば良いというものではない。
ギブソンの製作姿勢を非難することは簡単だが、楽器メーカーとしてのジレンマがあったのだろうと思った。
最後に、この本は、ES175好きに捧げられた本だと思う。
ES175が好きでなければ、買っても面白くないだろう。