深遠な経営理論
★★★★★
本書は、MIT Sloan School of Managementの教授であるオットー・シャーマーによる
異端の経営理論であり、経営指南書である。
孫子曰く、「彼を知り己を知れば、百戦して殆からず」・・・
MBAの手法で言えば、まずは3C分析などを用いて市場と競合他社
を中心とした分析を始めるであろう。
しかし、本当に知らなければならないのは、自分の内側であり、そして、
外的世界と内的世界の循環であるのだ。
そして、本書のアプローチは自分の心の中に投影された経験といった
経営者自身の内面を無意識レベルまで深く内省して掘っていくのである。
そして、既存の思考フレームともいうべき経験によって身につけた
過去の考え方をすべて捨て、将来創発されるだろう未来に向けての
新しい思考フレームや思考方法を身に付け自分自身をメタモルフォーゼして、
さらに外的世界との相互作用性を転換させるといったことについて
語られているのがこの手法である。
また、本書は、中観派の仏教、グレゴリー・ベイトソン、トランス・パーソナル
心理学、オートポイエーシスなどを最新の認知科学で濾過して援用した手法でもある。
本書を完全に理解するには、
フランシスコ・ヴァレラ「身体化された心」「オートポイエーシス」
グレゴリー・ベイトソン「精神の生態学」「精神と自然」
河本英夫「メタモルフォーゼ-オートポイエーシスの核心」
ニクラス・ルーマン「社会システム理論」
野中郁次郎「知的創造の経営」
といった参考文献を十分読み込んでおく必要があるだろう。
尚、著者に影響を与えた、UCバークレー校の認知心理学者である
エレノア・ロッシュの e-learningによる授業がバークレー校のサイトで
無償で視聴できるので、これを利用しても良いだろう。