『経済史入門』=「経済学の考え方」の入門書です
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経済史や歴史にたいして我々がもっているイメージを刷新してくれる本です。いきなりショックを与えてくれます。というのは、具体的な歴史的事実(いつどこで何があったか)の羅列は、「当事者以外にはほとんど意味がない、単なるお話に過ぎないのだ」という観点から、経済史の理論的枠組みについて解説されているからです。
そういう意図があるからでしょうか。各章は「経済史の意味」「経済と社会」にはじまって、「市場」「資本主義」「産業革命」「社会主義」など、経済学を理解するためのキーワードによって構成され、その説明に重点が置かれています。
したがってこの本は、経済学全体を視野に含んでいるばかりでなく、実は社会科学における認識の仕方を問題にしているとも言えます。本のタイトルは経済史「入門」ですが、「社会や制度・組織の構造をどう理解するか」についての解説書でもあると思います。
読みやすいので軽く読んでしまいがちですが、書かれている内容は深いです(とくに補講は難しい)。読んでおもしろい教科書は珍しいですが、機会があるごとに読む価値をもっている本だと思います。