良書。でも独学用には更なる改訂を希望。
★★★★☆
志田晶先生の本は「これは本当は大学で習うんだけど、知っとくと便利だよ」と、参考書に載っていない事が書いてあったりしてありがたいです。ベクトルの本でもお世話になりました。私は大学で行列は習ったはずなのに、もうハミルトンケーリーの定理さえ忘れ去っていました。そんな私だと、独学にはちょっと厳しい本でした。本書の一番の欠点は例題が少なすぎる事です。まだ全然慣れない内から、そこそこの問題を解かねばならず、挫折しやすいです。坂田アキラ先生の本は「まず基本」「次にほんのちょっとレベルを上げまっせ」「ちょいムズ」といくので心が折れにくいのですが。私はこの行列の本を今四回目の読破中(過去三回は途中棄権)で、やっと何とか人に説明できそうなレベルになってきました。時間の無い受験生だとそうもやってられないでしょうから、そのへんを何とか宜しくお願いしたいです。とは言うものの、他の参考書なんかよりは抜群にわかりやすいです。表紙絵のとべすなほ氏、女性とは思えない魅力的な絵柄ですね。って関係ないか。
類書の少ない数学C分野の自習書。学校で授業してもらえなかった人にも
★★★★☆
高校の授業で十分に扱ってもらえないことの多い「数学C」の「行列」「いろいろな曲線」の分野にスポットを当て、入試の基礎レベルまで周辺事項を含めて丁寧に解説した本。初学者から使えてなおかつそれなりの到達点の高さになるように内容が工夫されているほか、数学Cの問題をしっかりやることによって、周辺事項を見直すきっかけにもさせようとしている(たとえば行列のn乗を通じて整式の割り算や等比数列を復習するなど)。
位置づけとしては「佐藤の数学教科書」(東進ブックス)に近いが、こちらほど平板に文章は並ばず、同じ中経出版の「坂田アキラ」シリーズに近いビジュアルな紙面づくりを見せる。
基本事項の解説にも例題の解説にも講義調を取り入れてはいるが、話し言葉べったりではないところにある種の「品位」のようなものを感じる。話し言葉は吹き出しに入れて、教科書的な文章の部分と区別しようとしているのが河合塾講師でもある著者なりの工夫であり、バランス感覚なのであろう。
とにかく、この本の登場で選択肢は増えたといえる。細かい部分を含めて、最終的な評価は生徒の皆さんにお願いしよう。