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帝国陸軍 見果てぬ「防共回廊」

価格: ¥1,785
カテゴリ: 単行本
ブランド: 祥伝社
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日本人に生まれたことを誇りに思う ★★★★★
戦前日本の壮大な構想。もし成功していたら…を夢想して止まない。
興奮してあっという間に読み終えてしまった。

チベット、ウィグル、モンゴル、満州
上記国の独立を支援し、地勢的に、ソ連の南下阻止と中国を囲むことで
「防共回廊」を作ろうと奔走していた人達の話。

今、チベット問題やウィグル問題は世界の注目を集めているが、もしこの計画が成功していたら!!
歯痒いです。。。
戦前の日本人は、これだけのスケールをもった大構想を描き、着々と実行していたのだ ★★★★★
 「防共回廊」構想。戦前の日本人は、これだけのスケールをもった大構想を自ら描き、着々と実行していたのだ。構想が存在したということに対する驚き、しかしながらそれが最終的に実現しなかったことの無念さ。「見果てぬ夢」となったこの構想がもし実現していれば・・・。読者は著者とともに茫然と立ちつくす思いを抱くことになろう。

 チベット、モンゴル、回民(=回族、中国のムスリム)、ウイグル。いずれも大陸国家中国の辺境、あるいは内部にありながら、漢民族の中国ではない、さまざまな少数民族である。
 これらの諸民族がすべてつながったとき何が実現するのか。この大構想こそが「防共回廊」、すなわち戦前日本陸軍が構想した、新興ソ連の南下を防ぎ、共産主義に対抗するための大構想であった。そしてこの回廊はアフガニスタンにおいて完結し、アフガンでドイツの勢力圏とリンクするという大構想。これを知るとき、読者は唸らざるをえないだろう。
 戦後米国による冷戦構造が構築される以前、地政学の観点から、帝国陸軍主導で行われた構想である。日本の敗戦後、この構想にかかわった関係者を尋問し、米国が徹底研究したことは記憶されるべきことである。そしてなぜEUも米国もアフガンに派兵しているかについても、その意味を理解することができる。いち早くアフガンの地政学的重要性を指摘していたのは大川周明であった。

 本書の功績の一つは、林銑十郎に光をあてたことだろう。日本史の教科書ではボンクラ扱いされているこの人物が、実はドイツ駐在武官時代にいち早くイスラームの重要性について認識を深め、長文のレポートを作成していること、退役後は大日本回教協会の初代会長になっているのである。
 戦前の日本が、大陸政策をつうじて、いかにイスラーム世界とのかかわりを深めていたのか、すっかり忘却の彼方に追いやっていたのである。著者はこの林銑十郎につらなる人脈を掘り起こし、戦前のイスラーム政策の全体像を明らかにしようと試みている。これら戦前の事実が掘り起こされた意義はまことにもって大きい。
 ようやく日本でも、チベット問題やウイグル問題が大きく報道されるようになったが、かつて日本人たちが、たとえ国策の一環であろうと、少数民族の独立運動に深くコミットしていたこと。大川周明の大川塾から多くの志士たちが、大陸の奥深くへと工作の任務を担って潜入していたことは、記憶しておきたいことである。満洲国と同様の緩衝国家構想がウイグルにあった・・・

 ユーラシア大陸でひたすら膨張政策を続け、さらには海洋へと進出を図る中国の存在を考えるとき、この構想が実現していれば、大陸情勢が現在とは大きく異なるものであったに違いないと無念に思うのである。もしあと10年早くこの構想が国策として実行に移されていれば・・・。
結果として、米国を中心とした連合軍との戦争に敗れ、大陸から尻尾を巻くように撤退した日本の責任は、きわめて大きいといわざるをえない。大東亜戦争が本格化する数年前から本腰をいれたに過ぎなかったのである。
 敗戦とともに記憶を封印し、知らぬふりをしてきた戦後日本。近代(モダン)が終焉し、パラダイムチェンジを迎えつつある現在、虚心坦懐に過去を見つめ直し、歴史の連続性を回復する試みが多く行われるようになってきたことはうれしいことだ。戦後の呪縛を解き放ち、世界史における日本史の意義を確認するためにも、大きな一歩となることだろう。
 この構想の全体像をあきらかにし、さまざまな一次史料を読み込むことによって掘り起こした関岡氏には感謝の意を表明したい。まさの渾身の一冊である。

 本書を原作にして、マンガにしてもらいたいものだ。間違いなく、安彦良和の『虹色のトロツキー』に匹敵する大作となるだろう。
 ぜひ期待したい。
ドンキホーテ、それともgrand design? ★★★★☆
目覚める日本 (Voice select)のレヴューで、次の話題はなんなのでしょうかというコメントをしたのですが、次の話題はこれだったのですね。いや、これまた大きなテーマですわ。というよりもこれこそが関岡氏の若き日からの本来のテーマ(Know Your Enemy: The Rise and Fall of America's Soviet Expertsに共通する、汝の敵を知れ、もっともここでの敵は中国ですが)だったようです。日中戦争〈1〉 (文春文庫)でもこの華北での防共「傀儡」政権の設立は取り扱われていましたが、どうもその本質的な意味が把握できなかった私には、この「防共回廊」というキーワードは大変参考になりました。このアイディアはその戦略性と広大(encirclement)さからいって魅力的なものです。でもそれははたして「冷徹な戦略論」なのでしょうか、むしろあくまでもmight have been やcould have beenの域を出なかったからこそ、その魅力を今でも維持できるのではないでしょうか。実際に実行に移された他のケース(たとえばインド国民軍、The Forgotten Army: India's Armed Struggle for Independence, 1942-1945でもその現代的な意味合いは評価が難しいようです。実際にこの戦略を実行した場合におきたであろう軋轢やコストを考えた場合には、あくまでも傍流のしかし危険な魅力を持つ思想と考えた方が適当だと思われます。小さな民族はいつの時代にも様々な列強を幻惑して手玉に取ります。そこにはより小さな悪を求めての便宜上の結婚以上のものはありません。そして大国にとってはそれ以上の大きな利害の構図が存在するようです。そういう意味では中国に騙し続けられらるアメリカも喜劇的な存在です。ともあれこの危険な魅力の対象を提示したこの作品一読に値します。
奥付の資料一覧は有用 ★★★☆☆
この本は「まず思想ありき」で、資料から何かを読み解くのではなく、自らの思想を構築するために都合良く資料を利用しており、同著に論文や著作を利用された研究者は噴飯やるかたないと思う。「おいしい資料のつまみ食い」が散見されるが、そのいくつかを指摘しておく。1,ムハンマド・イミン・ボグラは別に日本にだけに接近したのではなく、自ら及び自民族のために様々な国にアプローチをかけており、氏の言うように格段親日的だったとは言い難い。結果として日本は、エイサ・アルプテキンとともに中華民国政治の中に入って改革していく道を選んだ彼に「捨てられた」のであり、その事実への認識がない。2,林銑十郎・松室孝良ラインの構想が内蒙工作に影響を与えたのは確かだが、その実行にあたっては田中隆吉の存在がある。田中は東京裁判で上官らに「不利な証言」を繰り返したため、戦後ある種の思想の人々に不評であるせいか、同著でも重要視されていない。3,同著では「日本のイスラーム政策はあくまでもソ連と中国共産党の脅威に対するカウンターインテリジェンス」と位置づけているが、当時日本でイスラームと言えば、東南アジアのそれであったことには触れていない。・・、と、言い出したらきりがないので、この辺にしておく。話半分でとっかかりとして読むには大変おもしろいが、史実と断定できない点も少なくなく、そこから先に行きたい読者は、著者が用いた元資料をひもといてみることを勧めたい。
平成の『東亜先覚志士紀伝』である ★★★★★
この本に出てくる日本人の名前は、かなり日本近代史に詳しい人でも、知らない人がほとんどだろう。しかしおそらく、未来に新たなる『東亜先覚志士紀伝』が編纂されるようなときがくれば、ここに登場する日本人たちはその登場人物となるだろう。『東亜先覚志士紀伝』とは、満洲国建国後に内田良平が編纂した浩瀚な東亜先覚の人物伝である。
関岡氏の本著はそれほどの画期的な書物である。
今まで日中間の近代史と思われていた戦争の相貌がまったく違った視点から見えてくる。
「防共回廊」――なんと素晴らしい計画であり、気宇壮大なロマンであったことだろうか。
今までの視点では、日本の中国侵略としか言い表されなかった日本の軍事行動が、「防共」という観点を入れることによって、大きな意味の転換がなされるのだ。
満洲の満洲人、内外モンゴルを通じるモンゴル人、そしてダライ・ラマを中心としてまとまるチベット人、中東と手をつなぐウィグル。これらの回廊を日本は本気で結ぼうとしていたのだ。
関岡氏はシナに住む回教徒を「回民」と当時の言葉で表現する。戦前の盧溝橋の絵葉書に、橋を渡るらくだの隊商の群れの写真が使われているが、あれは回民たちの仕事だったのだろうか。
「防共回廊が実現できていれば朝鮮戦争もべトナム戦争もなかった」というあとがきは、日本のかつての軍事行動の正当性を如実に物語る。歴史の可能性を我々に信じさせる。
この本によって、多くの日本人が自国の近代史に自信を持つであろう。
多くの人に読まれることを祈る。