経済の 見方が悪く 星3つ
★★★☆☆
1.内容
著者が、いろいろな人にインタビューをしたこと(p17によると、「八百のインタビュー」とのこと)などを基に、仕事とは何か、就職するとは何か、を考えた本。副題は「よい仕事、よい職場とは?」とあるが、明確な定義で押し切っているわけではなく、最後まで読んでわかる出来になっている。
2.評価
本や映画に親しむことや、何かに熱中することなど、いいアドバイスもある。また、引用が豊富で、この1冊だけでもそれなりの知識が身につく、といったメリットはあるが、考え方がどうかと思うところが結構多かったので星3つ。何点か。(1)p68では面接本に否定的なトーンになっているが、みんな研究しているのだから、この本にかかわらず面接本を参考にしたほうがいいと思う(私見)。(2)p81「学生と会社の『だましあい』」は不適当(p103にあるように、「不況で、多くの企業が採用を絞ったことが原因」)。(3)p158「絶対貧困」は同情すべきだが、だからと言って「現代のフリーターの若者のほうがずっと暮らしは向上」だの、「ネットカフェで暮らす人」が「例外的な存在」(p107)というのは少々酷なのではないか(「例外的な存在」は事実としても、誰かがなるのだから、強調は酷いんじゃないの)?(4)p99で、ニートは不健全と読めるところがあるが、経済の見方として不適当ではないか(仕事のない人がゼロということはありえないのでは?つまり、ニートがいることこそが健全なのでは?本書のような見方では偏見と差別を助長する。なお、ニートを奨励しているわけではない)?(5)p169の「トヨタ自動車の人事担当者の話」どおりならば、p118のA校、B校の記述は不適当では(就職活動の基準を作るのはあくまで企業だから)?と、結構突っ込みどころ満載だった。
就活テクニック本でもなく、一方的批判の書でもない。労働哲学のような思考に導かれていく気がした
★★★★★
いい本です。就活生だけでなくて、就活という社会現象に興味がある人、労働とは?仕事とは?についてじっくり考えたことがある人など幅広い人達に読んで欲しいなと思いながら読み進めていきました。
大学の先生になる前にいろんなところに書評を書かれて評価が高まっていった。そのことに納得がいくわかりやすさがあります。文体は柔らかくて、巧みな切り口で就活の周辺に迫っているので、現代日本社会論としても読めます。
興味深く読めたのは次のことです。
・面接での質問にどういうスタンスで答えたらいいかのヒントがわかりやすく書かれている
・規模は小さいが「良い職場」のことがよく出てくる
・頑張らずに適当に生きることが許されなくなっているいう指摘
・就職情報企業のマイナス面のついて明確に指摘している
・有名な企業の人事部長などの発言の多くが厚化粧であるという指摘
・広告会社の採用が大企業役員のコネ関連者が多いという指摘
・コネ優先になっているとの指摘
・企業は社員となってから本格的に教育する
・郵便局での労働経験と労働組合の役員になってからの労働実態調査の話
・労働組合への批判もちゃんとしている。GMや郵便局の労組の話が出てきます
・銘柄大学の強さ
・
きれいごとにすぎるのでは?
★★★☆☆
シューカツ、シューカツと騒ぐ前に、今いちど働くということの本質を考えよう、という内容です。
それ自体は正論であり、反対するようなことではありません。
ただ、現在の就職状況は、企業が、いかにむらがってくる学生を蹴落とすか、に必死になっており、学生としては、いかにそれに対抗して蹴落とされないか、という戦争であると思います。
そういう中で、資格なんていらないのだ、そんなものは就職してから取ればよいのだ、ということに代表される著者の意見は、あまりにもきれいごとにすぎるのではないでしょうか。
説明できる自分があるか
★★★★☆
私は日本のシューカツの現象は長続きしない、と見る立場だが、現実に苦戦している学生にこのような本を薦めたい。主な章のタイトルとポイントは以下のとおりである。
第一章 「良い仕事」と「良い職場」 では、良い職場を「長期にわたって本人が努力する限り、成長を助ける仕組みを持っている職場」と定義している。p.17
第三章 就活の決め手・この人物と働きたい では
職業人生に欠かせない次のようなテーマの重要性を説いている p.70
「会社という場所でどう生きたいのか」
「何を生きがいにしたいのか」
「何をすれば満足するのか」
「どんなことに感動するのか」
第四章 説明できる自分があるか
「私はゼミ生に専門書はもとよりのこと、小説やエッセイなどを多読させ、映画をたくさん観ることを薦めています。そうすると心の中に「大切なものを残す」作用があります。」p.82 は同感。
終章 働くということ
「誰にも属さない仕事」を率先してやることが大事。もし困難な仕事と簡単な仕事があって、どちらかを選ぶことができるなら、ためらうことなく困難な仕事を選ぶことをお勧めします。(p.185)
シューカツのまえに学生に読んでもらいたい一冊だ。
就活生は、まず足下を見つめて・・・
★★★★★
学生を見ていると、あまりにも予備知識、とくに正確な情報が不足したまま就活に飛び込んでいく者が多い。仕事、職場、職業生活がどんなものかわからないまま、企業から送られるメッセージや周囲の雑音に翻弄されている。現実はやはり就職してみないとわからないものだが、少なくとも現実に迫ろうという努力は必要だ。そうすれば、就職後に戸惑ったり後悔したりすることも大幅に減るはずだ。
本書の特長は、仕事、職場、職業生活について詳しく説明しているだけでなく、それらについて考え、自ら選択するための基準を身につけさせてくれるところにある。巷の就活本やビジネス書と違って、著者の価値観や一つの考え方を一方的に押しつけはしない。けれども抑制された表現の中には、数千の働く現場を見てきた著者の経験と洞察が凝縮されている。
平易な文体で書かれているので2時間もあれば読める。タイトルどおり「就活のまえに」2時間を投じるだけで、もしかすると人生が変わることになるかも知れない。