図面も充実していて、内容のとても濃い軍用機開発史
★★★★★
メッサーシュミット、ハインケル、フォッケウルフ3社の軍用機メーカー側から見た軍用機開発史。戦闘機に限らず、第1次大戦下の水上機や、第二次大戦末期の異形機に属するようなものまでカバーしている。設計者の技術的な苦悩よりも、ドイツ航空省側との確執がメインテーマのような感じ。ドイツの運用側の無能ぶりは、同時期の日本をも、はるかに超越している。小さいながら(文庫だから当然ですが)図面も、正面図、立面図、側面図と充実していて、私がいつも参考にしている「ドイツ空軍軍用機集」(グリーンアロウ社刊)にないような機種も掲載されているので、機種索引か目次があれば、座右に置くのにいいのだけど・・メッサーシュミットとミルヒの確執の原因となった M20輸送機、スピットファイアのように優美な楕円翼のハインケル112の初期型などなど。
ハインケルが第一次大戦下、「紅の豚」に登場する水上機をオーストリアの会社で設計していた頃から話は始まり、第二次大戦後、クルト・タンクがアルゼンチンに行って、ジット機を設計し続けたことまで、興味深い話がぎっしり詰まっている。だんだん異形機の魅力にもとりつかれてしまい、著者の世界に引き込まれてしまう。