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今読めない読みたい本

価格: ¥7,055
カテゴリ: 単行本
ブランド: ポプラ社
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一行を見つける眼力 ★★★★☆
 本の腰巻きには、「えっ! こんな本があったのか」とある。この本を一行で要約するとすれば、これ以外にはありえないだろう。ここには、役に立つとか立たないといったレベルでは測れない読書の楽しみがある。

 作家・有馬頼義の『経堂日記』を紹介し、この日記の面白さについて語ったあと、日記の最終日である昭和20年8月15日、午後9時の一行に目をとめる。「空襲もない、管制もない。静かな雨が降ってゐる」。

 終戦の日の空の青さばかりが喧伝されてきたが、戦争の終わったこの夜、東京には雨が降った(らしい)。日本人全体が腑抜けになったようなその晩、ひとしきり暑さを忘れさせる静かな雨が降ったということに、ほっとするような思いさえする。この一行を見のがさなかった著者の眼力に感心するが、これを大したものだと思う人なら、この本は大いに読むに価する。

第二部は著者の守備範囲でもある古書の話だが、いつもながらやはりこれが楽しい。著者はエッセイの名手でもある。本によって過去が現在と溶けあう合う醍醐味は、人生そのものにも通じるのだろう。そこには不思議な人間的な味わいがある。