艶やかな着物姿で2003年にデビューした異色のシンガー、bebeのセカンド作。今回もジャケットは着物姿。ストリングスをバックにゆったりと歌っている癒し系のヴォーカルという点では、デビュー作の路線を踏襲したものだ。この人のユニークなところは、ポップ曲やスタンダードにまったく独自の歌詞をつけてしまう点にある。「元々の歌詞がベストにきまっているので、意訳してもいいものはできない」と、自分の感じるまま、あらたに作詞してしまうのだ。その結果、原曲の歌詞の内容とはまったく別物になり、不思議な世界に誘われる。
本作でもそうした彼女の特異な才能は冴えている。映画音楽特集だが、マリリン・モンロー主演『お熱いのがお好き』からの「アイ・ウォナ・ビー・ラヴド・バイ・ユー」が「ラズベリーランデヴー」に、「いそしぎ」が「春へつづく道」に、そして「太陽がいっぱい」が「緋色(あかいろ)の家」に変身するといった具合で、予測不能の面白さが充満している。(市川正二)