国家の戦略に基づいて軍が強制的に徴用したという従軍慰安婦の不幸と、給料をもらい、毎日体調の検査があり、休日には映画などを観て過ごした慰安所で働く人々の不幸は区別しなければならない。
戦時中であれば、多くの人々が今からではとても考えられないような不幸に見舞われた事だろう。この本には戦争という運命に翻弄された多くの個人の体験がつぶさに語られている。その事実をよく読むと、日本軍・日本人の行動は、東南アジアの国々・人々のその後に大きく影響していた事が分かる。著者は『「日本のおかげで東南アジアが独立を・・・」なんて思わないでね。』と書いている。しかし、この本を読むとむしろ日本が東南アジアの独立に大きな影響を与えていたという事実が見えてくる。著者自身が調べ上げた事実が指し示す結論と、所々に書かれる彼女の見解は、なぜか全く正反対の方向を向く。
娘に宛てた手紙という形態が良かったか、非常に読みやすく、学ぶことも多かった。星を付けたいところだが、著者の歴史認識を評価できず、星1つ。