率直に申し上げて、危険な思想だと思います。占星術に名を借りて著者の妄想やさまざまな神秘思想を
結びつけただけの書です。まともな占星術の本ではありません。占星術と銘打ちながら多くのページを
オカルト思想、神秘思想の解説に費やしています。しかも、著者は本来の占星術をあまりにも歪曲して
いるし、解脱のための宗教思想も正しく理解していません。宗教的に言えば邪教の教えです。
低次元のアストラル的存在や心霊的に低い振動のレベルにもっと積極的に関われという著者の主張は
実に危険なカルト思想です。低次元の霊との接触を避けよというのはそれに関わった人々が魔境に落ちない
ための主張です。古来より魔術、呪術、邪教に関わった人達が如何に不幸なった事から来る歴史的教訓です。
エーテル体の低次元の霊と関わることは主体と客体の新しいグレーゾーンと著者は言いますが、それは同時に
悪魔に魅入られる最初のプロセスでもあります。そのような領域は悪魔の領域です。そのようにして自己を
破壊しないと惑星のよい影響は受けられないという考え方は、危険な新興宗教、カルト教団と変わりません。
私は著者の主張は占星術に名を借りた危険なカルト思想と思います。最近の著者はかなり妖しげな分野ヘ
足を踏み込んでおり、彼自身が魔境に陥りつつあるのではないかとさえ疑われます。

著者自身「おわりに」（p.320）で述べているが、これは通常の意味での「トランシッ
ト占星術」に関する著作ではない。通常の占星術の話を超えているからである。がし
かし私達一人ひとりが実人生に於いて、トランシット、即ちその折の星の配置を最大
限に活用する、という意味ではひょっとしたら最良の書であり、真の意味での「トラ
ンシット占星術」なのかもしれない。

まず「トランシット天体、すなわち現在天を移動している天体からくる影響をどう
読み、どう活用するかということを目的にしています」（p.52）とあるものの、その
活用の仕方が尋常でない。そもそも活用のツールが通常の占星術だけではなく、太陽
系の範囲を超えた星=恒星パランや、また占星術以外にもエーテル体、パワースポッ
ト、惑星グリッド等がこれに加わっている。

つまり個人の頭脳のみならず、オーラや個人を超えた範囲=地球そのもの、そして太
陽系外の星、つまり私達の廻りの環境すべてを利用しようというのだ。

恒星にかんする件り（p.235〜p.286）は目から鱗の、本書最大の読み処のひとつだ
が、まずは著者が紹介しているサイト、astro.comで読者一人ひとりがネイタル天体
に関わる恒星を出してみる事だろう。誰でも自分のホロスコープに関わる事から興味
が広がるものであるからだ。

10天体が12のハウスに滞在するという、通常の意味でのトランシットの記述もある
（p.95〜p.208）。但し「通常の意味」と云ってもそれは、「占星術家」としての分
析における鋭さと、「神秘思想家」としての思索の深さが同居した、著者ならではの
記述であることは論を俟たない。特に「おわりに」の「月の部分についてはかなりし
つこく書」（p.323）いた、とあるように、月に関しては、「月=エーテル体」そして
「月が1つしかない事」が地球上の私達に及ぼす影響等、驚愕の発想・記述もある事
にも附言しておく。