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万能鑑定士Qの探偵譚 「万能鑑定士Q」シリーズ (角川文庫)

価格: ¥0
カテゴリ: Kindle版
ブランド: KADOKAWA / 角川書店
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解説 細谷正充(文芸評論家)



「面白くて知恵がつく 人の死なないミステリ」



 あらためていうまでもないが、これは松岡圭祐の「万能鑑定士Q」シリーズに付された、キャッチ・コピーである。この世界の森羅万象を対象にして、意外な事実をストーリーと絡めた内容は、まさに〝面白くて知恵がつく〟だ。また〝人の死なないミステリ〟というのは、シリーズの大きな特色となっている。

 ところで〝人の死なないミステリ〟というと、日常の謎をメインにしたミステリを思い出される読者もいることだろう。近年では、三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖』や、岡崎琢磨の『珈琲店タレーランの事件簿』といった、人気シリーズも生まれている。それらのシリーズより先に刊行され、なおかつ〝人の死なないミステリ〟を前面に打ち出した本シリーズは、こうしたミステリー・ブームの先駆けとなったといっていい。

 本書のタイトルは『万能鑑定士Qの探偵譚』だが、内容からいえば〝万能鑑定士Qの帰還〟とでも名づけたくなる。テーマは、名探偵の挫折と再生。一度は心の折れた名探偵が、いかにして立ち直るかを、作者は面白すぎるストーリーを通じて、見事に書き上げた。メインの事件が解決した後の、最後の謎が、莉子の過去のトラウマにかかわるものになっていることも、テーマを考えれば納得である。

しかし、それにしてもだ。どこを取り上げても、本シリーズは凄すぎる。たとえば刊行ペース。記念すべき第一弾『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅰ』『同 Ⅱ』を、二〇一〇年四月、角川文庫から同時上梓すると、『同 Ⅳ』までを毎月刊行。さらに以後は、スピンオフ作品の「特等添乗員αの難事件」シリーズを含めて、二ヶ月に一冊の刊行ペースを維持しているのである。おかけでシリーズ開始から三年半だというのに、膨大な作品数を誇っているのだ。しかも内容に一切の手抜きも、弛みもない。常に新しいネタ、新しいアイディアが投入されているのである。超ハイペースで、これだけ高水準の作品を書き続けるとは……。「万能鑑定士Q」シリーズを執筆している松岡圭祐こそが、万能作家K(もちろんKはキングと読む)ではないのか。角川書店発行のコミック誌「ヤングエース」でのコミカライズ(画・神江ちず)や、二〇一四年初夏に予定されている実写映画化など、どんどん広がる「万能鑑定士Q」ワールドを牽引しながら、本シリーズがいつまでも続くことを期待しているのである。