セルフ・プロデュース力を持った三大女優の軌跡が織りなす映画史と社会史
★★★★★
オードリー、マリリン、リズ。交遊はなくても(ある時点からのリズとオードリーを除く)三人三様に、映画の枠を超えて社会に多大な影響を与えた三大女優の生い立ちから、その死(リズ以外の二人)または現在(リズ)までを描く。三章に分けて三人を別々に論じるのではなく、三人を順繰りに述べることを繰り返し、同時進行的に三人の人生と古き良きハリウッド帝国の崩壊を見つめる。特に1941年〜62年は、各年毎に三人の動静を描き分け、抜きつ抜かれつのデッド・ヒートを見る思いだ。
美貌だけでなく三人に共通するもの。それはセルフ・プロデュース力。マリリンは性意識に革命を起こし、オードリーはそのアンチ・テーゼとしての自分の立ち位置を認識しつつ、ファッションに新風をもたらし、リズはスキャンダルにまみれながらも史上初の百万ドル・スターとなる。一方、各々失恋あり、失敗作ありで、谷もあった。特に演技力を認めてもらいたかったマリリンの悲劇は痛切だ。クレオパトラはまだしも、マリリン主演でティファニーで朝食をが実現していたらと思う。
各人の出演映画の評もめりはりがあって参考になる。特にローマの休日の空白の時間の指摘は新鮮。