人知れず努力すればこそ…です
★★★★☆
日本女性として初、そして2回も宇宙へ行った向井さん。
彼女の弟が障害者で、母親はじめ家族が献身的に尽くす中から、彼女の努力する姿勢が育っているのですね。
弟のことでいじめられても、母親に言おうとしない。そして、母親はその気持ちがちゃんとわかっている。家族愛を感じました。
彼女は、弟のことがきっかけで医師となります。そのために中学から東京で勉強したい、と考えます。中学に進学する頃に、すでに先の先まで見越して、今何を為すべきかをこの年で考えているのです。
結局中学3年から、東京の高校に進学することを考えて上京をゆるされ、知人の家に預けられます。その時も、母は娘にこっそり上京し、近所に娘の写真を見せ手土産を配り挨拶に回ります。
娘は娘で、あまりにも寝る間を惜しんで勉強するものだから、もう預かれないと知人の方が心配で寝込むほどだったそうです。
そんな向井さんでも、努力の甲斐あって志望校に受かってからは、友達とのおしゃべりに夢中になって夜更かしし、寝坊してタクシーで登校するという時期もあったようです。ある日、自分は何をやっているのだ。苦労して自分を東京にやってくれている両親に申し訳ないと、はっとして、それからは心を入れ替えて、又勉強…。
医学部に進んでからも、男子学生でも嫌がる死体相手のアルバイトなどもして、勉強を続けます。医師になるまでこの道一筋のようですが、スキー部でも活躍しました。何でも、その時何を為すべきかを考え、全力で出来る人なんですね。
足を切断しなければならないかもしれない、と言われた弟も医学の進歩で普通に歩けるようになったようで、向井さんが宇宙飛行士になったのも、この弟がいればこそ、だったのかもしれません。
担当した患者さんが亡くなって、自分の無力さに打ちひしがれている時に見上げた、冬の夜空の圧倒的な美しさに、彼女は癒されます。
医師や宇宙飛行士になりたいお子様におススメします。
アトムポケット人物館というシリーズなので、アトム、ウラン、博士たちも冒頭と最後のQ&Aなどに出てきますが、向井さんの伝記部分とはコミック自体がまったく別物になっています。私的には、その方が良かったです。