ヤマトタケルは歴史的天皇像の混合シンボル
★★★★★
著者によれば、ヤマトタケルは、8世紀に記紀が作られたとき、藤原不比等らにより改竄された、歴史に登場した英雄的天皇や皇太子の業績を、総合して、シンボル化された人物像であるとする。
ヤマトタケルは基本的には恨みをもって亡くなり、その霊魂がたたるのを畏れられている人物たちである。
天皇家の葬儀では今に至るまで、必ずヤマトタケルの葬送のときの歌が謡われている。そこに彼が実在したとおもわれるふしがある。
それは、高天原から追放されたスサノオや大国主命であり、山河を跋扈した征服王の倭王武としての雄略天皇であり、あるいは恨みを飲んで死んだ大津皇子である。
草なぎの剣をもってたたかったタケルの動き、彼を助け彼を賞賛する勢力、人びとから推理して、タケルには出雲から東国、東海につながる縁があるとする。一見ばかばかしいと思うところもあるが、天皇たちがなぜ、どのようにしてその業績を改竄されたのか、そのアイデアは面白く、歴史推理小説として読むと一気によめる読み物で、大変楽しい。