構成、編集、選択の妙味
★★★★★
全部で23編の短編が収められています。オー・ヘンリーの短編の魅力の一つに、落ち、結末の味わい深さが挙げられますが、本書ではそれが十分に味わえます。以前読んだ経験のある作品も多いのですが、改めてそれぞれの作品の良さを知った思いです。
本書では、性格の異なる作品を選択し、それぞれ巧みな構成・順序の配列をし、一つひとつの作品が際立った光を放っています。他社から発刊されているものとは味わいの異なる短編集となっています。オー・ヘンリーを初めて読む方にはもちろん、読んだことのある方にもお勧めの1冊です。
O'Henryの伝えたかったもの
★★★★★
ある日O'Henryは、銀行の金を横領した罪で起訴され、病気の妻と娘を残して逃亡した。
翌年、妻の危篤を知ったO'Henryは家にもどり、妻の看病したが、その甲斐なく妻は病死した。
妻の死後、O'Henryは懲役5年の刑に服し、服役中に多くの作品を書いた。
釈放された後、娘と義父母が待つピッツバーグで新しい生活を始めたが。
娘を残してニューヨークへ。O'Henryは、幼なじみと再婚。娘を呼び寄せ、新しい生活を始めたが。
しかし過度の飲酒から体を壊し、肝硬変により死亡した。
O'Henryの作品の多くはは、病死した妻へ宛てた謝罪の言葉なのかもしれない。
魅力的な編み方
★★★★☆
O・ヘンリの短編集は新潮・岩波ほかで既に刊行されているので、後発のこの本は何を特徴としているのかが閲覧者の関心事と思います。
まず第一に、訳文が新しく、読みやすいということが挙げられます。海外ミステリの翻訳で知られる芹澤さんの訳は簡潔かつ明瞭で、内容によく合っており、現代の読者にフィットするでしょう。
そして、第二には一冊の「編み方」が挙げられます。O・ヘンリの作品の量は膨大で、必然的にどの文庫も短編選となるのですが、この本はその他のものに比べ、短編の選択と順番にこだわっているように感じます。
最初に「多忙な仲買人のロマンス」「献立表の春」など、比較的知られており、明るい作品を入れ、中途に「意中の人」「靴」など、あまり知られていない話を含め、そして最後の部分に「最後の一葉」「賢者の贈り物」などの代表的な傑作を集めるなど、彼の作品を読んだことがある人にもない人にも効果的にアピールできる編み方になっています。
読み終えたあと、「賢者の贈り物」を最後に持ってきたことに感嘆しました。この作品はO・ヘンリ自身の心情がよく表れた、あたたかな語りで締めくくられ、あたかもこの一冊すべての話を締めくくっているかのように感じられるからです。
解説も充実しており、O・ヘンリをよく知ることのできる一冊だと思います。気軽に読めるのでお薦めします。
ちなみに私は「二十年後」が最も好きです。
クセになる
★★★★☆
O・ヘンリーの短編集、23編入りです。
「賢者の贈り物」「最後の一葉」のような超メジャーなものから
これまであまり知られてこなかった南部や西部を舞台にした
短編も多く紹介されています。
お話のおもしろい、親戚のおじさんにお話を聞いているような
軽妙で洒脱で、皮肉も人間への愛情も織り込まれた、不思議な語り口。
何本も読むうちに、だんだん著者の語り方にはまっていきます。
「賢者の贈り物」や「最後の一葉」、「ミス・マーサのパン」などの話は
子どものころ読んで筋は覚えていたものの、改めて読み直すと
登場人物のディティールに、以前よりずっと深い印象が生まれました。
初めて読んだ「赤い族長の身代金」や「甦った改心」もすごくよかったです。
恋愛のお話が意外に多かったのですが、皮肉な結果に終わることが多く
なかなか成就しないのはちょっと残念でしたが。