金融・投資に関する経済学理論の特徴とその限界
★★★★★
アダム・スミスが「国富論」を著したころには経済学はPolitical Scienceという呼称で呼ばれ、つまり「政治家が持てあそぶ科学」という通念があったと思われる。
近代になり、「将来の一定の条件を仮定しその条件がもし実現されれば、一定の確率・危険率のもとで、一定の成果が期待できる」という命題を古典的統計理論を用い数理理論仮説の体系が近代経済学として各種開発され、コンピュータの普及とともに、たとえばDCS=Debt Credit Swapなどの高速の数値計算が可能となり、実際の金融・投資の取引やRisk Managementに適用されることとなった。
2008年に顕在化したWall Street発Financial Crisisの原因は、4点に大別、集約できよう。
1に将来の特定条件下で生起するはずの成果が、仮定した条件や環境そのものが実現されないため、現実が理論値を否定することになった
2に仮定された将来条件、環境を定義する際に用いる変数に過去の実績値がなくやむを得ず諮意的に適当な数値を採用した
3に実際に行われた金融・投資取引について取引金額、債権者、債務者の実態が正確に把握できない状態が生起した
4に政府が、金融・投資機関の要請に基づき、金融機関の不良取引をOff-Balanceにする許可を与えた、そのため計算書に記載されない隠れた債務が大量に発覚した、など財 政・金融秩序維持のルールが、政治的に諮意的に取り崩されたことである。
本書「世界金融戦争 下」は、近代経済学理論=仮説体系のドグマや経済学者同士の論争から離れて、何ゆえ、かような事態が発生したのか、歴史的な事実関係をもとに、克明にかつ解りやすく読者に提示してくれる良書である。 合わせて「世界金融戦争 上」とともに、更にでき得れば米国でもmillion sellerになった
「The Economics of Innocent FraudーTruth for our time-」John Kenneth Galbraith 2004 を一読されるようお勧めしたい。 以上
この頃から、アメリカさんはおかしかった
★★★★☆
本書は、2002年11月発行の単行本の普及版で、最早、若干古いんじゃないかと思っていたところ、読みにくいのを我慢しつつ、読み進んでいくと決して内容的には古くない、むしろ2008年のアメリカ発の金融不安が本書に書かれている事柄が端緒になっているケースが多いのではないかと気づかされます。
副題になっている「謀略渦巻くウォール街」の住人のいんちき紛いの会計操作、大手監査法人を巻き込んでの決算粉飾操作の手練手管、見て見ぬ振りのFRBとSECのインサイダー見逃し当たり前のアメリカ流馴れ合い、"これ見てよ!"張りのキリスト教風味満点の偽善取引の大盤振る舞い、もう嫌になっちゃいます。
SECの初代委員長があのJFKのお父っちゃんだったとは、マフィア資金で晴れて大統領になったケネディーの悪名ここに極まれリって感じでしょうか。
エンロン破綻で、パタンと破綻した"アーサー・アンダーセン"、「昼に近いあーーーさーーー!」とかなんとか言っていたんでしょうかねえ。A&Aの日本事務所には私も結構知り合いがおりまして、何やら、かにやらやってましたけど、やっぱり潰れるものは潰れるもんですなあ。自業自得!
ここでも、やはりユダヤの森のロスチャイルド家がちらほらと出てくるんですね。またか、世界を政治的・経済的・文化服装学院的に牛耳っているあのロスチャイルド!。
しかし反ユダヤのアラブも張り切って頑張ってますよ。アガ・カーン、世界一スケベなアラブ人、アラーの神の怒りに触れたのか数多のハリウッド女優と"LeTs Go To The Bed!"をしたけど、今から見れば結構若くしておっ死んじゃいました。こっちも自業自得!ですね。
広瀬隆氏は、「普及版」をオリジナルから全く改訂していませんが、「序文」で日本はこれからどうするべきかっていうことをさらっと、しかし、決断力を持って書いてくれております。要約すれば、アメリカ一辺倒を即刻やめること、グローバリゼーション紛いのものには今後日本は係わりあわないこと、食糧自給に努力し、真の意味で自立すべであると言っております。アメリカ寄りの姿勢を止めることについては、日米安保条約の廃棄まで言っているのには感心します。今時、珍しいですね、ここまで言い切れる人は!
アメリカ流の監査手法は、エンロンで嫌になるほどそのいんちき紛いの方法を見せ付けられましたが、2008年の今、果たして改善されているのでしょうか? まったくもって、信頼できません。現に、サブ・プライムーローンで破綻した各銀行等の継続企業の前提に関しては何の問題もなく見過ごし、「適正意見」付きの監査報告書をばら撒いてきたのですから・・・・。いやはや、とほほ、いやとほほ・・・・・。