定評ある虐待に関するテキストの翻訳
★★★★☆
子ども虐待研究に関するバランスのとれた概説書は、実は日本ではそれほど多くない。社会福祉系の研究者が書いたものは制度と統計データの解説中心であるし、心理学者の書いたものは被虐待児のカウンセリング中心になってしまいがちである。そのため、たとえば、虐待の原因論についての海外の研究(の最新の成果)は、本邦では、ほとんど紹介されていないのが現状である。このような中で、本書は、定評あるこの問題のテキストを翻訳したものとして評価できる。私の知る限り、この原書は、海外でも最も評価が高いもののひとつであり、多くの大学で参考書やテキストとして指定されている。翻訳に関しても、この分野の研究者でなく、プロの翻訳家が訳したのは大正解であり、非常に読みやすく、専門用語の誤り!も非常に少ない。虐待問題に関心を持つ人、とくにこの分野の実務家、学部生、大学院生が最初に読むべき本として大いにおすすめする。ただ、縦書きであること、版が小さいためやたら厚くなってしまい持ち歩きにくいのが、少し気になるところだ。