「見せるための芸術じゃなくて、生きること自体が芸術だと。」
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埼玉県桶川市にある無認可の保育園。
そのいなほ保育園の延長である北原和子さんへのインタビューを、
1年と1ヶ月かけて、
その季節ごとの問題、
子どもたちの成長を、
時系列に沿って書かれたもの。
“いなほ”は、
僕の知る限り、
日本のどこにもない保育園。
認可されない保育園ではなく、
無認可を選んでいるのだ。
はたから見ると、
自由奔放、
野性味あふれる保育。
でも、真実はそこにあるのではない。
“いなほ”は和子さんであり、
和子さんが“いなほ”なのである。
すべての園児に目をとどかせる。
そして“いなほ”の根を心に根付かせる。
卒園に向けた、
一人ひとりの成長の段階を的確に捉え、
その時々の次の選択を与える。
たぶん、大人が子どもにしてあげられることは、
その選択肢を与えることくらいだろうと、僕は思う。
そして、彼女が信頼される要因は、
その大人と子どもの関係が、
“命を守る”ということだからだ。
そのための自分の力を身につける。
だから子どもたちにとっては、
「和子は自分の命を守ってくれる」人なのだ。
そんな命を守る和子さんの言葉が、
何とも人間を育てること、
ただそれだけなのだということを教えてくれる。
そしてもう一つ。
近頃の“いなほ”の新しい形。
小学部とも言える“けやき組”の存在。
今、和子さんがとても心に気にかけているのは、
彼らのこと。
始める頃は、なかなか理解を得られなかったのだが、
今では、その存在が、
“いなほ”の中で、異年齢のあこがれを生み出し、
生きる力につながっている。
そこに子どもがいるから。
だから“いなほ”は、次の選択に進んだのだ。
そして、これからも………。
「見せるための芸術じゃなくて、生きること自体が芸術だと。」
和子さんの言葉は、
ずっと僕が心に思っていたことを、
言葉にしてくれた思いだった。
保育理論でも、
子育て論でもない、
人間を見る力と、信頼する心を見る。
そんな1冊でした。
小児科医杉原のオススメ
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「いなほ保育園の十二ヶ月」はスタジオジプリの無料雑誌「熱風」に連載されたインタビューをまとめたものです。
著者の北原和子さんは、子育ての芸術家である、と感じました。
子育てが、この保育園では作業ではなく、まったく人間という作品づくりに焦点が当てられています。
知育ではなく、感情や存在としてのBEINGを伸ばすことに中心がおかれているように見えました。
動物も含めた、複数の立場の子ども、大人がかかわり合うコミュニティ。
非常に要求されることは高いので、こだわりをもった保育に命がけで関わる覚悟がなければ、かたちだけこの保育園を真似しても同じ結果は得られないでしょう.
育児中のお母さん必読!!
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雑誌に載ったり、映画にもなっている「いなほ保育園」での、子供達の様子が、一年を通して月別に語られています。子供達の遊びの様子、生きる力がひしひしと伝わります。その大元を支えているのが、すごい園長先生です。経験と直感から、それぞれの子供達の本来持つ力を最大限伸ばせる環境を作っていきます。
子供達が自然の中でのびのびと生き生きときらきらと育って行くと、こんなにもの力を発揮できるんだ、それを生かすも殺すも、人(大人から子供まで)、動物、自然など周りの環境はとても重要と感じます。いなほにいる子は幸せだなと思います。一方で、日々きらきらと発達していく子供達を全て一日保育園にまかせてしまうことは、母親としてものすごくもったいないのことなのかも!とふと思いました。
これから私の子育ても先はまだ長いです。いらついた時もどんな時も必ずしっかりと子供と向き合っていようと思いました。そうしたらなんとかなる。
今現在子育てしている身として、今の一般的な子供達のおかれている環境も含めて考えさせられる一冊です。