有名な美濃部達吉の「天皇機関説」が、それだけで独立した論説ではなかったこと、2.26事件が発生する直前に行われた総選挙では民主主義を標榜する政党が圧勝したこと等、私達の一般的な捉え方とは異にする歴史の事象が現れてきます。
一方で、専門の学者さんが書いたものだけに、読者が当然知っておくべきと著者が考えているだろう前提が非常に多く、読み進めるのに苦労します。新書ですし、素人にもわかるような註があれば理解がもっと進むのに、と思いました。
昭和6年の満州事変から昭和20年の敗戦までの時期は、「十五年戦争」とよく表現されるが、必ずしもそれは一直線に突き進んだわけではなく、ためらいや行き違いなどが交錯していたということを知る上で、多くの示唆を与える。
練達の筆者ならではの一冊。