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昭和史の決定的瞬間 (ちくま新書)

価格: ¥798
カテゴリ: 新書
ブランド: 筑摩書房
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立憲君主制を押し潰した「時代の空気」 ★★★★★
満州事変によって、日本全体が一気に戦争に傾いたという「常識」を覆す書。
盧溝橋事件が起こる直前まで、戦争回避への努力が続いていたことがわかる。
昭和のデモクラシーがいかに抵抗したかということを教えてくれる。

しかし、これをもって「戦前は暗黒時代だったという戦後史観は嘘」ということにはならないだろう。
著者もそういうことを言いたかったわけではないと思う。
そもそも、大日本帝国憲法は立憲君主制であるということを理解していたのは、一握りの知識階層に過ぎなかったし、
満州事変以後は新聞が、戦争へ向けて大いに世論を煽った。

それに、2.26事件以後も声を挙げていたのは特別な立場にあるか、特別に勇気ある人々に限られていたのである。
そして彼らに言論の場を提供した「中央公論」は、後に戦時下最大の言論弾圧を受ける(横浜事件)。

本書は明治デモクラシー、大正デモクラシーの流れを汲む昭和デモクラシーが時代の空気に抗えず、
最後に挫折していく過程を明らかにしている。
今日に生きる我々は、そこから多くの教訓を引き出すことができるだろう。
民主主義について考えさせられた本。 ★★★★★
平易な文章で書かれており、大変読みやすい。
2.26事件の直前に行われた昭和11年第19回総選挙から昭和12年の盧溝橋事件までの期間を主に対象として分析している。

「戦争とファシズム」対「平和と民主主義」という構図を否定し、「戦争とファシズム」が「平和と民主主義」を一方的に追い詰めて日中戦争に突入したという構図もまた、明快に否定している。

日中戦争は戦前民主主義の頂点で勃発したのであって、、ファシズムが民主主義に勝利して戦争が勃発するのでもなく、民主主義が盛んならば戦争は起きないわけでもないのである。

「『民主主義』は『戦争』を阻止できなかったが、『戦争』は『民主主義』を抑圧できたのである」(本書P188)という言葉には考えさせられる。

平易な文章で書かれており、専門的な知識がなくても楽しめるにも関わらず、実証的な良書である。
視点の鋭さあり ★★★★☆
類書の多い昭和史のなかで、この本は独特の視点がある。1930年代は、ただ軍国主義へ向かう視点で記述されることが普通であり、それに反対する書物は、感情的に日本国擁護になりやすい。しかし、この本では、2・26事件の1週間前に総選挙があったことに注目している。また、宇垣内閣の流産やその後の総選挙の分析から、「昭和史の決定的瞬間 」を探し出している。それは1930年代のいつかは述べないが、ここでは、全面的に暗黒の時代ではないという著者の視点がある。当時、これに気づいていたのは、意外にも政治家ではなく中野重治などの文学者や哲学者であったという。学術論文を加筆して明解かつスリリングな文章になっている。
決定的瞬間とは ★★★☆☆
本書は2.26事件や日中戦争勃発の昭和11,12年にフォーカスし、そこがなぜ歴史の転換点だったのかを、歴史の教科書だけでは掴みきれない真相まで掘り下げています。

有名な美濃部達吉の「天皇機関説」が、それだけで独立した論説ではなかったこと、2.26事件が発生する直前に行われた総選挙では民主主義を標榜する政党が圧勝したこと等、私達の一般的な捉え方とは異にする歴史の事象が現れてきます。

一方で、専門の学者さんが書いたものだけに、読者が当然知っておくべきと著者が考えているだろう前提が非常に多く、読み進めるのに苦労します。新書ですし、素人にもわかるような註があれば理解がもっと進むのに、と思いました。

二・二六と盧溝橋のはざ間で ★★★★★
本書は、昭和11年・12年の総選挙の意義を重視し、「準戦時体制」とも呼ばれる当時の政局を読み直す。そして社会改革を主張し躍進する社会民主主義政党が軍拡に肯定的で、現状維持を志向する既成の保守政党が軍拡に歯止めをかけようとしたというパラドックスが浮かび上がる。

昭和6年の満州事変から昭和20年の敗戦までの時期は、「十五年戦争」とよく表現されるが、必ずしもそれは一直線に突き進んだわけではなく、ためらいや行き違いなどが交錯していたということを知る上で、多くの示唆を与える。
練達の筆者ならではの一冊。