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聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)

価格: ¥924
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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凄まじいスピードで変化・発展し、そして消え行く漁業に、我が国社会の明日の姿を見る ★★★★★
漁師と言えば自然が相手。つい、工業化・商業化が進んだ現代日本の社会変化からは距離のある存在であるかのように思いがちだが、本書を読めばまず、それがとんでもない勘違いだと気付くことになるだろう。最近の数十年間で日本の商工業が大きく変化したのと同様、あるいはそれ以上の凄まじいスピードで、漁業もまた変化し、発展し、今やすっかり、いわば「資本主義漁業・市場主義漁業」の時代になっていたのである。

その凄まじい変化は、一時は漁師たちにかつてはあり得なかった富をもたらした。だからこの僅かな間の目まぐるしい変化は、以前であれば確実に「漁業の進歩」と呼ばれたに違いない。ところがその「進歩」の先にあったのは、もはやどんな技術革新でも贖えない、生業としての漁業の持続を不可能にする資源枯渇だったのである。
だから今日叫ばれている「漁業の危機」は、何も行政の無策ばかりが原因なのではない。むしろ他でもない漁業自身の発展と進歩、そして資本主義・市場主義の浸透とが、漁業自らを滅亡へと追い込んで来たのだ。

本書を読んでそのことを知った私には、今や歴史の黄昏に消え去ろうとしている“にっぽんの漁師”たちの後姿を、他人事として見送ることは出来ない。漁師ではない私もまた、自らの関わる商業や工業の活動を通じて、少し遅れて、彼ら“にっぽんの漁師”たちの背中を追っているに過ぎないと思えてならないからだ。

本書が最初に単行本として上梓されてから、既に10年が経つ。その間に我が国の漁業は少しでも、滅亡に向けられていた針路を変えることが出来たのか。それとも相変わらず、破滅の断崖へと一直線に、その船脚を速め続けているのか。日本の漁業の行く末に日本社会全体の未来を重ね合わせて、私は本当に背中が寒くなる思いがした。