これらのロックンロール時代創生期のアートは、いまよりもっとシンプルで、商業的な色合いが薄く、味わいがあった時代を思い起こさせてくれる。この本で紹介されているTシャツは商業目的で生産されたものではなく、レコード会社による販売促進のため、あるいはファンやウッドストックなどの祭典のために作られたものなのだが、初期のデザインは質素で素人っぽいものであったことがわかる。ロックバンドのシャツが市販されるようになると、レコード会社は、Tシャツには人間広告としての宣伝力があり、ロゴやバンド名、コンサート開催地やその他の情報をのせれば儲かるかもしれないということに気付いた。やがて、ジーンズとスニーカーに合わせたロックTシャツは、反体制主義者であることを示すユニフォームとなっていった。そしていまでは、初期のTシャツは流行の最先端を行く、非常に高価なファッションの1つになっている。『Vintage Rock Tee-Shirts』はそういった初期の時代のスナップ集で、Tシャツや広告、ロゴ、記録写真が多数収録されている。