簒奪者への光
★★★★☆
王莽は前漢の簒奪者として長年貶められてきた。
例えば、始皇帝や曹操のように毀誉褒貶の激しい人物もいるが、
王莽は常にマイナスイメージでしか語られてこなかった。
本書はその王莽に簒奪者としての悪評を取り払い、
公平な目で王莽を評価しようという意欲的な内容である。
簒奪者としての王莽は無能ではなかった。
それはある程度は認識されていただろうが、
王莽の政治思想は時代錯誤の復古主義と片付けられることが多い。
その王莽の政治的なビジョンがそれほど否定されるものではないと
著者は説く。
彼のビジョンの一部は後漢へとも受け継がれているという。
面白い内容だが、結論より先に王莽の擁護が強すぎるきらいがある。
公平な目で歴史上の人物を語ることの難しさを思い知らされる。