この本は、ドイツ語原版、『Ideologie und Utopie』の英訳とされているが、意訳が多い。
日本語訳(中央公論社刊)は、ドイツ語版の直訳であり、英訳とはかなり趣が異なる。
例えば、｢SeinsVerbundenheit｣は、日本語訳では、｢存在拘束性｣と訳しているが、英訳では、 ｢situational determination｣(状況決定)となっている。
どちらの方が分かりやすいか、この言葉からしても、すぐに分かるだろう。
英訳は、かなり噛み砕いて訳しており、ドイツ語(日本語訳)のように、哲学書という雰囲気がない。
そこで、読者は、二種類の翻訳を揃える方が賢明である。
英訳と日本語訳である。
英訳は、解読の中心として読むためであり、日本語訳は、時折、意味不明の単語、例えば、｢千年王国説｣のような単語の意味を、訳注で調べるためである。
このように、英訳と日本語訳を対応させながら読むと、かなり分かりやすく読める。
なお、読む順番だが、序章を飛ばして、第1章の｢Ideology and Utopia｣を読む方が、分かりやすい。
余計なことだが、この英訳が安い理由は、東南アジアで印刷されたReprint版だからである。