Brooklyへ移民したアイルランド人の女の子、Eliisの物語
★★★★☆
2009年のブッカー賞にノミネートされ、今年コスタ賞小説部門で受賞した作品。さすがに、読み応えのある力強い作品だった。
1950年代、アイルランドの小さな町で姉と母と3人で暮らしていたEilis。学校をでたものの、職がなく、姉のすすめで1人、アメリカBrooklyに移住することになる。祖国から遠く離れた地で、孤独と戦いながらも少しずつ成長を遂げ、愛を知り、夢に向かって着実に歩んでいた彼女だが、ある日・・・・・・。というストーリー。
三人称の淡々としたスタイルでありながら、主人公Eilisの揺れる心の内を見事に表現していて、ただただ著者の筆力に感服。ディーテイルを書き込んでいるものの、無駄がなく、着実に前へ前へと進んでいく物語。
ただ、実際に物語が「発展」していくのは中盤に差し掛かってからなので、そこに行き着くまではやや労を要する。つまらないわけではなく、もちろん全て必要な段取りではあるのだけれど、「カッコいい男の子」がでてこないとやっぱりちょっとつまらなかったりして・・・。
そして、ラストが、まぁいいラストなんだろうけれど、あぁ、これで終わってしまうのか・・・という気持ちにならなくもない。あまりに盛り上がったので、突然終わってしまった、みたいな・・・。
英語は、語彙はそれほど難しくない(辞書はひかなくても大丈夫)だったけれど、言い回しが堅くて、一文もやや長く、アイルランド特有の言い回しもたまにでてきて(著者はアイルランド人)、やや難、といったレベルか。コンマの使い方が一般的なアメリカ人とは違う気がする(普通、コンマをいれるべきところで入れない)。でも、この「堅い」言い回しが、当時の時代背景とマッチしているし、物語の雰囲気を味わい深いものしているので、それはそれでよかった。
一言で言うと、力のある人の趣のある作品をじっくりと読ませていただいた、という感じです。