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暗号理論と楕円曲線

価格: ¥3,990
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 森北出版
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暗号理論の最新動向を展望する素敵な書 ★★★★★
本書は暗号理論の最新動向を解説するテキストであり、適切な例題を含めてコンパクトに纏まっており、非常に読みやすい。

楕円暗号は難解であるというイメージが定着しているが、本書ではユークリッドの互除法、多項式環のイデアル、有限体上の代数(特に、楕円)曲線などの基本事項が丁寧に解説されており、数学があまり得意でない方でも「有限体上の楕円曲線の有理点群が、巡回群或いは二つの巡回群の直積である」ことを自然に理解できる。ここから、素位数の巡回部分群の基点を基にして、楕円曲線暗号を明快に理解できるところが本書の素晴らしい処だと思う。

次に、他の成書であまり扱われていない超楕円曲線暗号と楕円曲線上のヴェイユペアリングに基づく暗号方式の解説があり、非常に有益である。特に、超楕円曲線暗号では、超楕円曲線のヤコビ多様体(0次の因子類群)のマンフォード表現が実に巧みに活用されており、その数学的構造の美しさとマンフォード表現を求める(ユークリッドの互除法を基本とする)アルゴリズムの簡潔さは、本書の一つのハイライトと言える。

更に、多変数公開鍵暗号や誤り訂正符号に基づく暗号などの最新動向にもかなり詳しく言及されている。多変数公開鍵暗号に対しグレブナ基底計算が潜在的な解読法になり得るという指摘や符号理論に基づく秘密分散法などは、多くの方々にとって興味深いものであろう。

わが国では実学と見做されることが多い暗号理論が、ヴェイユやマンフォードなどの超一流の数学者の業績をその基礎としていること、またコブリッツやコックスなどの著名な数学者がこの理論に多大な貢献をなしていることを知る事ができると思う。暗号理論の最新動向に興味を持つ全ての方にお薦めしたい必読の好著である。