夜の国のクーパー (創元推理文庫)
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これは猫と戦争、そしてなにより世界の秘密のおはなし。伊坂幸太郎が描く、壮大な傑作!
「ちょっと待ってほしいのだが」私はトムという名の猫に話しかけた。猫に喋りかけていること自体、眩暈を覚える思いだったが致し方ない。前には猫がおり、自分は身動きが取れず、しかもその猫が私に理解できる言葉を発しているのは事実なのだ。目を覚ましたら見覚えのない土地の草叢で、蔓で縛られ、身動きが取れなくなっていた。仰向けの胸には灰色の猫が座っていて、「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と声を出すから、驚きが頭を突き抜けた。「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きた。戦争が終わったんだ」――伊坂幸太郎、十冊目の書き下ろし長編は、世界の秘密についてのおはなし。野心的傑作。
著者あとがき=伊坂幸太郎/解説=松浦正人
*本電子書籍は『夜の国のクーパー』(創元推理文庫版 2015年3月20日初版発行)を底本としています。