最後の複葉戦闘機の戦いを描いた良心的な本
★★★★☆
本書は第2次大戦開戦後に就役が始まった複葉戦闘機フィアットCR.42を駆って戦ったイタリア、ベルギー、ハンガリー、スウェーデン、ドイツ(!)のパイロットたちの戦いぶりが書かれた本で写真や機体のカラー塗装図もあるという構成は他のシリーズと同じです。但し、本書は(他のシリーズでは部隊毎、または戦域毎に記述されたものが多いのに)戦域を手広く広げたイタリア軍の戦闘内容が時系列毎に北アフリカ、東アフリカ、英国、ギリシア、と話題にしている戦線が目まぐるしく入れ替わり落ち着きの無い印象です。内容は単純に撃墜戦果を羅列するのでは無く、可能な限り相手側の情報とのクロスチェックを行い空戦の実態を明らかにする良心的な内容になっています。本書で最大の問題なのは巻末のイタリア空軍パイロットのエースリストで個人の撃墜数に多数の共同撃墜が盛り込まれたことで、同じシリーズのItalian Aces of World War 2には共同撃墜は採用していないし、本書の共著者のGustavsson氏のWebサイトでもこれ程多数は載せていない共同撃墜(イタリア空軍独特の撃墜に寄与しなくても空戦に参加したパイロット全員に戦果として認める算定を共同撃墜としてカウントしている可能性が高く、フランコ ルッキーニのように従来個人撃墜数の21〜22機とされていたものに突然52機もの共同撃墜を上乗せされたケースもあります)が本書で唐突に採用された印象が強いです。この算定法の考え方を明らかにして、その妥当性を議論する余地があります。