温暖化以上の人類生存上の大問題を示す
★★★★☆
本書の出だしがワシントンでのロビー活動などであり、その後も、政治的な話が続く。このことから、最初の部分を多少がまんして読むことが必要である。本書が伝えようとしていることは、帯にある「温暖化よりもはるかに怖い真実」、また、第4章のタイトル「気候変動よりも急を要する」の通り、石油資源の開発がすでに減り始めており、そのあとには採掘量の減少が始まるという、石油に依存した現代文明の存続にとってきわめて深刻な内容である。本書は全体として、この問題をめぐる各国政府や石油メジャー、OPECなどの動きを生き生きと描き出している。また、対策についても議論している。国際政治の中では、地球温暖化対策としてのCO2の排出権取引などが議論されているようだが、本当に必要なのは、石油エネルギーに代わる新しいエネルギー資源ではないかと実感する。
もう少し早くこの書を手にしていれば……
★★★★★
すさまじいばかりの事実の集積と説得力に、これから向かおうとする時代が、さらにはっきりと見えてきた気がした。もう一年早く、この書に出会っていたらと思うのは、私だけだろうか。読み物としても、大変エキサイティングで、楽しめた。著者はイギリス人のようだが、ここまでよく取材ができるのも、英語圏の強みか。日本の雑誌や書籍のいい加減な取材、作りとは、やはりかけられる労力も資力も違うと言うことだろう。日本のジャーナリズムだけでなく、文化自体の行く末が、おぼつかなく思える。
カーシェアリングを始めようかな。
★★★☆☆
関係者170人余に取材し、その結果を十分に練り上
げ厚みのある記述でまとめられていて、改めてイギリス
のジャーナリストの底力(翻訳も分かりやすい。)を感じ
ました。
著者のいうピーク・オイルとは、世界の石油延べ採掘
量が埋蔵量の半分になることで、メジャー資本やOPE
Cの懸命な隠蔽に関わらず10年未満にその時期が訪
れること、そしてその代替エネルギーと呼ばれるものが
役割を果たせないか又は整備が間に合わないことを、合
わせて論証しています。この立場にどれほどの客観性が
あるかは、高止まりしたままの原油価格を見れば判るこ
ととわたしは思います。例えそれに同意してもらえなくて
も、本書を読めば、少なくとも今後の国際政治の決定要
因として食糧(水資源を含む)、地球環境にエネルギー
を加えることには賛成してもらえると思います。
この事態に対し、著者が国やわたし達に勧めることは
ひとつです。エネルギー浪費型の生活を見直し、その消
費量を減らし、ピ−ク・オイルの時期を先延ばしすると共
にその時のショックの免疫をつけることです。わたしは
早速、今行っている投資や自宅の新築計画を見直しす
ることにしました。
本書を読んで気になったことを、ふたつ書き加えてお
きます。ひとつは、米英のイラク侵攻が世界的に石油の
供給不足が迫っているという認識が決断の背景になっ
ているらしいこと。どうもテロとの対決というお題目は、
鵜呑みにはできないようです。もうひとつは、米が自国
の石油を確保するため、絶対君主として君臨するサウ
ジのサウド家を支援し続けてきたことです。これは、アフ
ガンでの軍事行動を有利にするため、隣国パキスタンの
独裁政権を、打倒されたごく最近まで支援してきたとい
う事実と照応し合うものです。自国の権益のためなら何
でもありの国とは、少し距離を取ったほうが賢明かなと
思いました。
近い将来に到来する地球温暖化以上の危機
★★★★★
化石燃料はいずれ枯渇する。多くの人はその程度のことは理解している。しかしながら、この本で示されている「ラスト・オイルショック」が近い将来に起こる可能性があることを知っている人は少ない。わが国の政治家や役人はどうだろうか?資源エネルギー庁の役人は理解しているだろうか?この本で紹介されているBP統計の最新版(BP2007)によると、石油、天然ガス、石炭の可採年数は、それぞれ41年、63年、147年である。また、OECDによるUranium 2005によるとウランの可採年数は85年とされている。一見すると、あと300年以上、エネルギー資源は枯渇しないかのように見える。この本で指摘されている「可採年数」の計算の仕方の問題点を理解すれば、それが間違いであることが良く分かるだろう。現在のペースでこれらの資源を利用すると、あと100年程度でこれらの資源が枯渇するという計算になる。途上国でのエネルギー需要が増加すれば、さらに枯渇までの期間はもっと短くなる。それ以前にラスト・オイルショックが到来する。我々がすぐに立ち向かわなければならない問題は地球温暖化ではない。ラスト・オイルショックの影響を少しでも緩和するため、国及び国民は第10章、第11章に示されているアクションを直ちにとらねばならない。まずこの本を読んでほしい。そして必要な行動を起こしてほしい。特にわが国の政治に関わっている人たちお願いしたい。
暗黒の近未来を予測した必読の本
★★★★★
石油の価格が下がらない.つまり需要と供給が既に噛み合わなくなっているのだ.これこそ著者の説く最終オイルショックが既に始まりかけている兆候である.石油は 1950年以降狂気の如く採掘され (本文 p.91,図10),何時かは供給不足になる (peak out). 本書ではピークアウトの時期の予測に始まり,石油価格が暴騰する近未来の憂鬱な状況を精細に描写する.この部分が余りに凄惨なので,読み進むのが辛くなるが,そこは優秀なジャーナリスト (BBC御用) のこと,最後の章で人間味を見せてくれる.でも,石油で動く自動車は姿を消し,超距離輸送を要する食品もなくなり,日本のような食糧自給率の低い国が生き残れるかは不明.総ては政策立案実行能力を備えた優秀な政府が持てるかどうかにかかっている.