環境問題は、集団的なパラノイアである。
★★★★☆
「幻想は、現実と想像の基本的な対立に関して、単に想像の側にあるわけではない。幻想は、むしろ、想像による小さな断片であり、その断片によってわれわれは、現実との接点を手にする。」
例えば人種差別の対象は、個々の人間からなる客観的な集団ではなく、幻想上の人物像なのであるが、幻想の枠組みが現実を構成している限り、幻想を選び取ってしまうことになる。現実をみても幻想を修正できない状態はすでにある種のパラノイアの状態なのであるが、近年の環境問題、とくに環境ホルモン、ダイオキシン、地球温暖化などは、集団的なパラノイアなのではないかという気すらしてくる。
本書そのものは悪くはないが、今時ジジェクを読むのは莫迦
★★★☆☆
ジジェクほど、いいかげんな精神分析的哲学者も珍しい。彼の言うことは嘘八百。思いつきで何でもほいほいと還元主義的に物事を整理してしまうひとなので重宝がられているが、こんなひとに騙されて、つきあっているような読者では、将来がおぼつかない。
ジジェクを読む気になる
★★★★☆
訳者はあとがきで翻訳依頼を受けたとき、「ジジェクの入門書なんていらないんじゃないんのと思った」と述べている。理由は「ジジェクの著作がそれ自体わかりやすいから」である。しかしそうは言っても、予備知識のない素人が読み通すことができるほど平易なものではないだろう。
本書はヘーゲル、マルクス、ラカンの何がどのようにジジェクの理論構築に影響を与えたかをコンパクトかつ平明に説明し(第一章)、ジジェク理論を概観できるようになっている(第二章以降)。
入門書とはそもそも、それが必要とされなくなることを目的に書かれるものなのなのだから、読者をジジェクの著作へと誘えなければ失敗である。そういう意味で本書はジジェクを読む気にさせてくれる。分かりやすいが、密度のある著作である。