グリム童話全作品を一冊で読める
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ドイツ語の原書を英訳したグリム童話全集。
シンデレラ、白雪姫、眠れる美女(いばら姫)、ヘンゼルとグレーテル、赤ずきん、ブレーメンの音楽隊、ラプンツェル、ホレおばさんなど、良く知られた話からあまり知られていない話まで、全グリム童話200話が収録されています。
グリム童話については、定本とされる原書第7版の収録順にしたがい KHM 1〜200 までの番号がつけられ、原書の物語を特定できるようになっています。
ちなみに KHMというのは、原題 Kinder und Hausmarchen の頭文字。
たとえば、KHM53といえば 「白雪姫」、KHM26なら 「赤ずきん」 といったぐあい。
本書の収録作品も原書にあわせた順番となっているため、グリム童話の解説書や研究書を読むさいにも、国際的に広く利用されている KHM番号から物語を引くことができ便利です。
本書の英訳者は Margaret Hunt。
1884年に出版された本がベースとなっており、英語圏では広く親しまれている翻訳のひとつのようです。
訳文は童話らしく親しみやすいもので、私たち日本人にも読みやすい英文となっています。
高橋義人 『グリム童話の世界』 を参考にしながら、本書の英訳に目をとおしてみたところ、けっこう原書に忠実な訳文であることもわかりました。
たとえば、魔術的な力を持つ 「賢女」 を 「魔法使い」 と訳すようなことはしていません。
さらに特筆すべきは、アーサー・ラッカム(Arthur Rackham)の挿絵がたくさん収録されている点。
ラッカムは、日本にもファンの多い挿絵画家のひとりです。